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koburii

Author:koburii
HN:こぶり
国内外問わず、夫の仕事の関係で引越しばかりしている40代の主婦。



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読書メモ:”Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore”

”Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore”を読み始めました。こちらも今年のアレックス賞で気になっていた一冊。

またもや軽い文体で楽しめそうな本。最近読書が楽しくて楽しくて仕方ないんだけど、選書で成功しているのかな。

舞台はサンフランシスコ。

主人公のClayは若いウェブデザイナーで、EXグーグラーが企業したベーグルビジネスで働くも、すぐ失業して休職中というサンフランには絶対どこかにいそうな青年です。

なんとか見つけた仕事が、24時間営業の古本屋のクラーク。アメリカはあまり24時間営業の店というのが無いし、ましてや本屋で24時間365日オープンしている店なんてとても珍しい。日本ならツタヤとかあるけれども。

それでじゃあどれだけ流行っているのですかというと、これが全然客が来ない。お客は来ないのに24時間営業。前職で店の閉店で失業した主人公は、売り上げが心配であれこれ気を揉んだりしている。そして店の潜んだ場所に謎の本たちが存在し、この本を、買うのではなく、借りにくる特定の人々がいます。

とにかく妖しいこの本屋で、一体何が起きているのか主人公が暴きだそうとしています。グーグルで働くガールフレンド、ハイテクビジネスを企業して大金持ちになった幼なじみなんかも交えて進んでいきますが、軽い好奇心が思いのほか大きな謎にぶちあたります。

とにかく文章が面白い。主人公には共感も出来、好感が持てる。仕事探しの箇所もこんな感じ。

At first I had insisted I would only work at a company with a mission I believed in. Then I thought maybe it would be fine as long as I was learning something new. After that I decided it just couldn't be evil. Now I was carefully delineating my personal definition of evil.

デジタル世代と、古き良きペーパーブック時代を上手くブレンドした娯楽本といった感じでしょうか。

ところでサンフランの古本屋と言うと、私が真っ先に思い浮かべるのがこちらの古本屋。

Green Apple Books

遊びに行った時は必ず何度か足を運びます。狭っこい隠れ部屋みたいなスペースに本が収まっていたり、店員さんが本好きだからおすすめメモが至る所に貼られているし、何時間でも居られるし、何時間いても飽きない場所。

この本に登場する本屋は、こんなポピュラーさもないし、もっとずっと狭そうですが。


週末は花見三昧でした!
どこを歩いても花、花、花、で最高の季節です。
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花に囲まれ読書三昧なんて、何様だよ自分って感じなんですが。


168冊目:Where'd You Go Bernadette

Book No.168
Title: Where'd You Go Bernadette
Author: Maria Semple
Publication date: August 14, 2012
Pages: 326 pages



読み終わりました。ちょっと夢中で読んだようで、夜の読書時間が多めだった。おかげでここ2〜3日は楽しみにしている野球中継も中途半端で見所を逃す。

主人公の女性Bernadetteは50歳の主婦。近所付き合いもPTAの活動にも積極的に参加しないので、ママ友からもご近所でも嫌われています。確かに、家事もほとんどせず、15歳になる娘はもうすぐボーディングスクールに入れる予定だし、夜もろくに寝ないで朝まで起きていたり、人付きあいが嫌で、家に引きこもり、インドに住んでいるインターネット秘書に旅行の手配から近所のレストランの予約や買い物のオーダーまで何から何までさせている、まあざっくり言えばちょっと重度のコミュ障主婦ですね。

ところでこのBernadetteは、マイクロソフトで活躍している旦那さんがいます。そのためLAからシアトルに引越してきたわけですが、1年中雨の降っているこの街も、近所の人々もBernadetteはうんざりのようです。おまけに買った家は、問題だらけで、雨漏りはするは、床は腐るは、近所のトラブルの元にはなるわ。この家はBernadetteそのものを表しているかのようです。

Bernadetteは結婚前は、全米の中でもトップクラスの建築デザイナーとして、将来を約束されていたキャリア女性です。それが夫の仕事で引越し、夫の成功を横で見ながら娘を産み育て、ママ友や近所付き合いで悩まされ、引きこもりになり、しまいには旦那に浮気され、なんとか軌道修正しようともがき、でももがくほど空回りで、みんなからは問題児扱いされる。そして逃亡。

逃亡した母親を、15歳の娘Beeだけは必死で理解しようとします。この娘が非常にかわいらしい、健気で。ただ一人ママの見方。女の子はいいやね。

近所で、PTAの中で、何が起きたのか。母親を追いつめたのは誰なのか。父親は何をしたのか、もしかは何をしなかったのか。Beeのナレーションと、母親同士、会社でのEメールのやりとり、手紙の交換などが降り混ざって進んで行きます。

基本的には楽しい小説です。けれど主婦のアイデンティティ問題なんかもテーマでしょうし、社会風刺も効いてますから、笑うに笑えないかもな箇所も多々あり。Bernadetteは無責任だし、取った行動は決して褒められないけれど、主婦なら(特に子育てを優先にしてきた母親なら)、誰にでもこんな風に思い詰めてしまう時期はあるのではないかと思う。そしてさんざん苦しんで、もがいて、最後には、やっぱりありのままの自分でいいこと、そして要は自分の気の持ちようだと思い至るのではないかと。軽そうな感じで始まる小説だけど、途中で実は結構ディープなのかと心して読み、でも最後はやっぱりそれほど重くはなかったという感じで爽やかにエンディングを迎えます。

それにしても引きこもり主婦と南極とは面白い。シアトルのローカル話もかなりうける。アメリカのリッチ向けエリート私立学校も西も東もいろいろありそうだし、マイクロソフトのお膝元の学校とか街の話も恐いもの見たさの楽しさが。ところでシアトルは2、3回行ったことはあるけど、雨も好きだし、コーヒーも美味しくて、図書館も充実してて(それこそビルゲイツが寄付した図書館とかすごかったし)住みたいと思った都市の一つ。シアトルについていろいろ書かれてはいるけれど、最後にはちゃんと愛情も感じられるので、シアトルにお住まいの方も途中で投げ出さず安心してお読み下さい。けれど個人的には、この本を一番おすすめしたい人はやっぱり雅子さまかなあ。。。機会があればぜひ!

英語の単語はそれほど難しくはなく読みやすいのですが、普通の文章での説明ではなく、メールの繋ぎあわせで人物描写がされていたり、メールの発信者がコロコロ変わるので、人によってはこれが逆に読みにくいかもしれません。


読書メモ:Where'd You Go, Bernadette

こちらも待望のペーパーバック版が出たので入手。Maria Sempleの、"Where'd You Go, Bernadette"を少しずつ読み始めている。

主役のBernadette Foxは50歳の引きこもり主婦。

シアトル。旦那さんはマイクロソフトの花形で成功者。出来のいい娘も、マイクロソフトの保護者が集まる私立の学校に通い、もうすぐボーディングスクールへ入学予定。子育ても一段落しているが、コミュニティから距離を置くBernadetteは、ママ友からは問題児扱いされ近所では鼻つまみもの。インドのネット秘書に、レストランの予約から何から何までさせ、マーケットには買い出し行っても、自分は車で待ち、娘にあれこれ買いに走らせる重度のコミュ障。もうすぐ娘との約束で南極大陸ツアーに行く予定ではあるが、このコミュ障のせいで、クルーズで人との出会いや会話のおびえている。

これが一応今のBernadette。けれど過去には建築デザインのカリスマとして、かなり優秀で将来を有望視されていた女性らしい。

とりあえずパート1まではこんな感じ。メールのやりとりと、娘のナレーターで進むので、始めは掴みにくいんだけど、非常に面白い。

ここからBernadetteが消えてしまい、その理由を娘が探求するらしいのです。

「恵まれてはいるのは知っているけど、家族も、ご近所も、親戚関係も、なにもかも捨てて消えたい」という思いを抱えた主婦って意外といると思うのよね。もちろんそれで本当に消える人は少ないと思うけど、ファンタジーとして想像することは誰にでもあるのではないでしょうか(え、ない?)

文体は軽く、読みやすく、面白いんだけど、テーマは想像以上にディープなのかな。どうなのだろう。わくわく。

読みやすいけど子供子供していない、YAと一般の中間のような本に送られるアレックス賞を始め、いろいろ受賞している作品でもあります。

映:Oblivion(2013)



Oblivion(2013) / 監督:ジョセフ・コシンスキー

2070年代。60年前に謎のエイリアンに襲われボロボロになった地球にはもう人は住んでおらず、みんな他の星や宇宙ステーションに移住している。Jack Harper/トム・クルーズ(またはTechナンバー49)はチームで恋人のVictoriaと二人、任務で地球に残って無人飛行船を修理したり、エナジーソースを探したりしている。任期は残り僅か。一方で過去を覚えていないJack だが、ぼんやりと昔の映像に悩まさていれる。そこには見知らぬ、けれど親しみを覚える女性の映像と、エンパイアステートビルの展望台。

ある時宇宙船が不時着し、その際助け出した女性がJackの記憶に住む女性だった。女性の名前はJulia。そしてJackはJuliaと一緒に、謎の集団に襲われ捕まる。謎の集団は地球残っているエイリアンではなく、人間だった。彼らは何故地下に潜伏しているのか。またJuliaは誰なのか。Jackもまた誰なのか。

最後の方で「え?」となり、最後の最後は「ん〜」なんだけど、まあまあ面白かった。空中の家は気持ちいいし(でもプールは要らんだろう。あの高さじゃ凄く寒いはずだし)、映像が綺麗。一般で観たけど、IMAXで観てもよかったかな〜。まあ見所はそんなにないので贅沢といえば贅沢ですが。
トムクルーズはやっぱり2時間無理なく観客を引きつけるスター性があるし、モーガンフリーマンも渋くて素敵。
Wall-EとかMatrixをちょっとずつ彷彿させるような元がアニメのSFだけど、この二人が出ているのでドラマ性がちゃんと漂っている。映画のタイトルもいい。てかこのタイトルじゃなかったら観に行ってないと思う。客層は、30〜40代の男性が、一人か彼女連れで観に来ているケースが多かった。

映画の中で印象的に使われている絵はアンドリュー・ワイエスの”Christina's World ”。私の好きな絵でもあります。ニューヨークのMoMAにあります。

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167冊目:The Dinner

Book No.167
Title: The Dinner
Author: Herman Koch
Publication date: February 12, 2013
Pages: 304 pages



Herman Kochの" The Dinner "を読み終えた。

読みやすくて構成も凝っているのでスルスル読めてしまいます。オランダ語から翻訳されたものなので、英語も難しいものは使われていませんし。ただテクニックやエンターテイメント的には大満足ですが、内容的にはそれほどの感動はなかったかな。

けれど”Gone Girl”と”We Need to Talk About Kevin”を足して割ったようなダークで心理的に落ち着かない、引き込ませるプロットではあります。

ある夏の夜。アムステルダムのひっそりとした素敵なレストラン。
ここで二組の夫婦が食事をします。男二人はきょうだいで、一人は次期プライムミニスターとも言われている大物政治家。もう一人はメンタル問題を抱える元歴史の教師で過去12年は休職中。

アペリティフを頼み、前菜を選び、穏やかに食事は進んで行きます。最近の映画の話や社会事情、儀礼的なやりとり、ふれあうグラスの音。
二組の夫婦には同い年の15歳になる息子がいます。この息子同士は友人で、実はあるショッキングな事件に関わっています。何が起きたかはなかなか明かされません。二組の夫婦がこの息子たちの話を出すのも、メインも終わったデザートの時です。

本は5章、"Aperitif" "Appetizer" "Main Course" "Dessert" "Digestif"に分かれていて、読者も一緒に食事を待たされるかのようにじらされ、なかなか明かされない出来事の全貌を待たなければいけません。

キャラクターは何ともまあ誰一人好感が持てません。最初は嫌な感じの有名政治家が、最後は一番まともだと思えるくらいです。ナレーターでもある休職中の冴えない男性は、明らかに問題を抱えています。彼の皮肉や卑屈さも最初は面白いけれど、だんだんと笑えないレベルになってくる。

夏の午後のアムスの隠れ家的なお洒落なレストランの雰囲気を楽しみ、アペリティフのシャンパンから前菜、メインコース、デザート、食後酒のグラッパまでのお食事を楽しみつつ(どれも美味しそうよ)、一方でダークでずっしりとくる事件を聞かされるという、ある意味悪趣味な、ある意味そそられる話ではあります。

ハッピーエンドや、読後の感動を求める方にはおすすめできません。また面倒くさいタイプの男のうだうだは聞きたくないわいっという人にも進めません。けれど英語はとても読みやすくページターナーで、ダークな引力を持つエンターテイメント性の高い1冊です。


読書メモ:" The Dinner"

タイムズのレビューで気になっていた Herman Kochの "The Dinner"を読み始める。

舞台はオランダ。アムスの小洒落たレストラン。登場人物は2組の夫婦。

この4人のディナーでの会話というか出来事がメインストリームとなっている小説。途中もちろん回想や過去の出来事が挟まれる。チャプターも"Aperitif" "Appetizer" "Main Course" "Digestif"とメニューのようにわかれていて面白い。

男同士は兄弟。一人は冴えない中年男といった感じですが(彼がナレーター)、もう一人は有名な政治家でプライムミニスター候補とも囁かれている大物。

とりあえず今読んでいるあたりまでは、本当に何も起きない。"Aperitif"と"Appetizer"を読み終えたのですが、主に映画の話とか、ナレーターの男のちょっとひねくれた人間観察などが語られている。このナレーターの男の面倒くさい感じがなかなか楽しい。料理が運ばれて「〇〇でございます」と出されると、口には出さないけれど「知ってるよ、俺が頼んだから」と胸の中で悪態をつくタイプ。

二組の夫婦には、共通して15歳の息子がいる。この息子二人が何かやらかしたらしいのです。でもなかなか話の本題には入りそうもない。本題はメインコースの章のお楽しみでしょうね。この章だけ断トツに長いし。

もともとオランダ語を英語に翻訳しているので、難しい単語も使われておらず、すごく読みやすいです。

何も起こらないのに、不思議と読み止らない。

私もメインは明日のお楽しみにして、今日は寝ます。





166冊目:The Light Between Oceans

Book No.166
Title: The Light Between Oceans
Author: M. L. Stedman
Publication date: July 31, 2012
Pages: 352 pages



泣きました。

くさいんですけど、くさいところで思いっきり泣いてしまいました。

Tom Sherbourne is a lighthouse keeper on Janus Rock, a tiny island a half day’s boat journey from the coast of Western Australia. When a baby washes up in a rowboat, he and his young wife Isabel decide to raise the child as their own. The baby seems like a gift from God, and the couple’s reasoning for keeping her seduces the reader into entering the waters of treacherous morality even as Tom--whose moral code withstood the horrors of World War I--begins to waver.

舞台は1920年前後のオーストラリア。第一次大戦で兵士として戦ったTomは、トラウマを抱えながら灯台守として働いている。ある時本土で出会った若い娘Isabelと恋に落ち、結婚する。

灯台はメインランドから舟で軽く半日はかかる孤島、Janus Rockにあります。ヤヌスというその名が暗示するように、大海の入り口であり出口であり、大海の狭間で小さな光を放っているこの島は、まさにいろんな意味でこの小説の象徴となっています。

このJanus Rockでの二人だけの生活は、若く恋する二人には最高だった。けれどIsabelの度重なる流産と死産で、孤独はそれほど素敵なものでもなくなってくる。そんなある晩、なぞの舟が漂着。舟には男の死体が乗っていて、傍らには元気な女の赤ちゃんが。本土に報告を入れようとするTomと、一日待ってくれと嘆願するIsabel。そしてこの決断が、さらに深い悲しみの種になるわけですが。。

あまり書くとネタバレになるのでこれ以上は書きません。二人の、子供を失った母親両方の叫びに引き裂かれそうになりました。もう誰が悪いとかも咎めたくない。いろんな人の気持ちがわかるぶん、余計辛い。物語って、悪人が出て来る方がスムーズにハッピーエンドになるものなんですよね。悪人が出て来ないと、どうしてこうやって悲劇になってしまうのだろう。

悲しいです。けれどとてもドラマ性が高く、引き込まれます。特にラストに向かい、涙涙です。

舞台もロマンチックだし、風の音、波の音、灯台の光やランタンの灯りが映像的に迫ってくる美しさもあります。

作者はオーストラリアの方ですが、英語のクセも少なく比較的読みやすかったです。








花見2013と読書メモ:The Light Between Oceans

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セントラルパークの花見。花見にはいつものハンバーガー
デザートはまだ残っていたイースターのチョコ。
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ここ最近とてもいい感じの陽気が続いています。

読書メモです。

"The Light Between Oceans"ですが、現在最後の大波に入りました。
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ラストに向かい目が離せない展開が続く。

最後まで引っ張るかと思っていた本当の母親が、わりと早い時点で登場しました。最初は主人公が子供を失ったかわいそうな母親でしたが、これで立場が逆転。

隠れているものであらわにならぬものはなく。悲劇。悲劇ですよ奥様!

この小説、DreamWorksが権利をとって映画化もされるそうですねえ。ドラマチックですものねえ。。

今晩は最後のページを読み終わるまでは眠れないでしょう・・

この感じ・・幸せだわあ・・



和書「神様のいない日本シリーズ」他

週末は野球を観てきました。
デイゲーム?4時スタートのやつ。
今シーズン初です。
去年は4〜5回足を運びましたが、今年は何回行けるのか。引越ししだいです。

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メンバーもすっかり入れ替わって寂しい気もするが、全体的に若返っていい感じのヤンキース。
カノーもすでに中堅選手ですよ。

野球といえば、最近読んだ本でこれも面白かった。

「神様のいない日本シリーズ」
田中慎弥

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登場人物は父と息子。とはいっても息子は部屋にひきこもって出てこず(語らず)、父親がドア越しに一方的に話かける形で進みます。

聞こえるか、香折。父さんは廊下に座って話をする。この扉は開けない。断っておくが、自分の部屋に逃げ込んだお前と向き合うのが怖いというわけじゃない。ただ、ついさっき母さんとお前と三人で、食卓で話をしていた時、顔を突き合わせて話すとお互いの目つきとかちょっとした仕草とかが気になって、言いたいことが言えなかったり相手の話が聞き取れなかったりするもんだって、父さんは思ったんだ。〜神様のいない日本シリーズ〜

このように始まる父さんの語り。息子の香折くんはどうやら学校でいじめにあっていて、そのイジメも、男のくせに香折(かおり)という名前だとか、お前のじいさんは豚を殺したとか、身内絡みなものです。わたしたちは本1冊かけて、どうして父さんは女の子みたいな名前を息子につけたのか、どうしておじいさんは豚を殺したのかを知ります。

そしてそれは1986年の奇跡の日本シリーズであり、ベケットの「ゴドーを待ちながら」であり、神様の忘れものであり、初恋の話であり。

やりたいことが出来なかった団塊世代、やりたいことはわからないけどやりたくないことはわかる団塊ジュニア世代、やりたいことをみつけなくてはならないジュニアの子供世代。3世代、ジェネレーション的な話と、野球でつながる親子の物語。展開が予測出来ず読者を引き込みます。で、私はアラフォーの父さんと同世代なので、この年の日本シリーズはよく覚えています。

父親といえば野球です。違いますかね。父親は野球だったよ私の世代は。小さい頃にいなくなった私の父も、巨人の話ばかりしていたし、巨人が負けると口をきかなくなる人だった(ちなみに私はこの時代は掛布バース岡田の阪神ファンだった)。祖父と父、父と息子、照れ屋で気持ちを伝えることが苦手な男たちが、野球で、バットで、伝えようとしたこと、伝えられなかったこと。

笑ったり、しみじみしたり、楽しかったです。他の作品も読みたいと思いました。



「何者」
朝井リョウ

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主人公は就職活動中の学生6人。
就活の進み具合や今取り組んでいることを、毎日顔を合わせていても、ツイッターやフェイスブックで報告しあう仲間たち。楽しんでやっている子もいれば、冷めた目でみてしまう子もいるんだなろうなあ。知らなくてもいいことまで知っちゃったりね。
自分は何者なのか。何者かになれるのか。同じ大学で同い年の友人達と、自分との違いは何なのか。

SNSなんかで感じるモヤモヤをきちんと言語化してくれるので、同世代は特に読んでいてたぶんスッキリするのがこの本の魅力に一つ。スッキリ度が高い分、ラストで一緒にしっぺ返しを食らうのですが。

寒い、と俺は思ってしまった。
ギンジは今、誰にも伝えなくていい段階のことを、この世で一番熱い言葉をかき集めて、世界中に伝えようとしている・・・甘い蜜でコーティングしたような言葉を使って、他人に、理想の自分を想像してもらおうとしている。想像。想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。他の人間とは違う自分を、誰かに想像して欲しくてたまらないのだ。

それらしい言葉を使ってるだけじゃ何にもなれないんだって。そんなところを誰かに見てもらいたいと思ってるうちは、絶対何にもなれないんだって。〜何者〜


友達同士の言い合いの場面は、毎回かなりドキドキしました。いや、ここまでハッキリ言いあえる仲間なら、たぶんとっても素晴らしい。

でも大人も芸能人も著名人までが、一生懸命SNSやブログなどを通して何者かであることを証明しようと躍起になってる昨今です。若い子ならなおさらでしょう。逆に、自己顕示欲をコントロールできる若者がいたらすごいよね。

隆良くんは、ずーっと、自分がいまやっていることの過程を、みんなに知ってもらおうとしてるよね・・・誰かと知り合った、誰かの話を聞いた、こういうことを企画している、いまこういう本を読んでいる、こういうことを考察してる、周りは自分にこういうことを期待しているとか

十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所で見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって 〜何者〜


学生さんだけでなく、SNSやTwitter世代なら誰でも夢中になってしまうことでしょう。一度読み始めると、本を置けない毒性もあるのでご注意を。

ただTwitter上のつぶやきで構成されてる箇所が多く、小説を読んでいるというよりは、読書中ずっとネットをしてる気分でした。それも売れる理由か。



「ひとり日和」
青山七恵

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高校を卒業してフラフラしていた知寿は、唯一の家族である母親の中国行きをきっかけに、母の昔の知り合いで、東京で一人暮らしをしている吟子さんの家にお世話になることになる。吟子さんは70歳の老女で、猫を飼って一人暮らしをしている。

唯一の肉親である母親とも、上手く関係が築けていない主人公の知寿は、人と上手くコミュニケーションが取れない。おそらくかなり孤独なのだけれど、その寂しさにまったく注意を向けていないので自分でも気がついていない。

学生でも、社会人でも、主婦でも、子供でも、年寄りでも、なんでもない存在。家族もいなくなり、誰の誰でもない存在の主人公が、誰の誰でもない老女と送る日々。

置かれている境遇も性格も、あんまりよろしくない主人公だけど、必要以上に自分を責めたり、良い子ぶろうとしないところが意外と好感がもてた。お年寄りに優しくないところもいい。

同居人の吟子さんは、70も過ぎ、家族もいない。知寿と同じように、何でもない存在であるが、何となく楽に生きているように知寿には見え、それが羨ましいというか嫉妬してしまう。

わけのわからない盗癖のある知寿。一方こっそり知寿の化粧品を使ってすっとぼけている吟子さん。かたや若い肌を見せつけ、もう片方は年寄りのリア充ぶりを見せつけたり、ちょっとした女のバチバチもあるが、それも湿気たマッチをこすりあわせた程度なのがおかしい。

何の責任も、社会的な利害関係もなく、恋愛感情ももちろんない一時的な間柄の中でだけで生まれるある種の関係。不思議と自分の人生に影響を与えていく何でもない人たち。特別大きな意味はないけれど、私たちの人生の心像をつくっている何でもない景色たちを、若い著者は恥じることなく、かといって固執することもなく、絶妙な距離を保ちつつ描ききっている。


読書メモ:The Light Between Oceans

M. L. Stedmanの"The Light Between Oceans"がやっとペーパーバックになったので読み始める。

思えば去年の夏から長い間売れていた本で、アマゾンのレビューも2000件近く感想が寄せられ(2013/4月現在)、ほとんどの人が好評価をつけている()。私も読もう読もうと思いながら、ペーパーバックを待っていた。

まだ最初のパート1しか読んでいないのでなんとも言えないけど、とりあえずいい感じです。ドラマ性もあり、別の世界に連れて行ってくれる読書の醍醐味が味わえそうな本。

オーストラリア。ボートで半日はかかる沖合に浮かぶ孤島。ここにある灯台が舞台。ここで灯台守(lighthouse keeper)をしているTomと、その妻Isabel。二人は若く、愛し合う素敵な若夫婦なのですが、Isabelは何度も流産と死産を繰り返し子供が出来ません。そこへある晩、謎のボートが漂着。ボートの中には男の死体と、女性もののカーディガンに包まれた赤ん坊が乗っていました。すぐに報告をしようというTomと、それを制してしっかり赤ちゃんを抱いて離さないIsabel。もうこの冒頭で、のちのちのトラブルが暗い影となって現れていますね。

ここからしばらく8年前に戻り、TomとIsabelの出会いやら、Tomの過去やらが入ります。灯台守の生活、孤島での生活などが映像のように浮かんでくる。40ページを超えてくると、Isabelがカラフルに動き回りパッとしますね。

パート1では冒頭は1926年4月27日。そして1918年に戻ります。パート2は再び1926年に戻ります。さてどんな展開となるのでしょう。楽しみだなあ。

それにしても、孤島灯台での暮らしってちょっと憧れますねえ。お家と食べ物が確保された無人島みたいな感じで。読んでいて、いいないいなと何度も思った。実際してみると寂しく厳しいお仕事なんでしょうが・・