タイトル長。児童書のオーディオブックです。ナレーションが演技派女優のリリー・テイラーなのです。最近すっかりホラーなイメージの女優さんですが、そのおかげかドラマチックで最後まで一気に聴けました。

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Title: Ida B: . . . and Her Plans to Maximize Fun, Avoid Disaster, and (Possibly) Save the World
Author: Katherine Hannigan
Publisher:Greenwillow Books; Reprint edition
Publication date: December 2006
Pages: 272 pages

“We don't own the earth. We are the earth's caretakers.we take care of it and all the things on it. And when we're done with it, it should be left better than we found it.”


主人公のIda B. Applewoodは、ウィスコンシンの農場でお母さんとお父さんと犬と平和に暮らしています。学校は一度通ってみたものの、規則と自由の無さに辟易しホームスクーリングにしてもらい、自分で毎日あれこれ計画を立てたりかなりマイペースに過ごしている少女。

学校にも行かずきょうだいもいないので、友達は犬だけなのだけど、Ida B.は木々と会話、コミュニケート出来るのね。それぞれに名前もあるし。そしてある日、その木々から"hard times are coming"と忠告を受けるの。

自然と、自由と、毎日のルーティン。何からも脅かされず、家族だけに囲まれ、自分の好きなペースで生き、世界平和を願うIda B. の人生は、母親の病気を機に大きく変わってしまいます。ここからIda B. は自分の力ではどうにもならない現実と始めて向き合うの。妥協や我慢を強いられ、他人と付き合わねばならず、自分のペースが壊され、心が怒りで満ちていきます。

約束されていたものが、スルスルと滑り落ち、何も信用出来ない。すっかりと心を閉ざしてしまうIda B. 。もう木々も話しかけてはくれなくなります。面白くないことばかりの毎日がIda B. の心をすっかり変えてしまったのね。明るく楽しみいっぱいの少女は、無口で頑固になり心を開かないことを心に誓う。こんな精神状態で、誰が人に優しく出来るものかと。自分の気持ちを守るために、自分が自分の一番の敵になってしまうという難しい問題は、思春期だけのものでもありませんが。

Ida B. は自分の怒りと上手く向き合えるでしょうか。また再び木々が語りかけてくれるのでしょうか。自分勝手で、頑固で、でも心根の悪くない、どこにでもいる普通の少女Ida B. の、怒りでいっぱいの気持ち、傷つく気持ち、哀しい気持ち、揺れ動く気持ち、ぐるぐると巡る感情がストレートに素直に表現されているのが良かったです。

久々の児童書かな。児童書のオーディオブックをもっともっと聴きたいなあと思いました。夕食の食器洗い中とかアイロンがけ中の暇つぶしに丁度いい・・・・

2015.01.30 夏の。
近々また行くことになりそうなので、その前に放置していた夏のべガス旅行(&グランドキャニオン)の覚え書きを。

まずホテル。
宿泊先はベネチアン・ホテル

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プールが凄かった。大きいプール3つ。スパと噴水のこじんまりした隠れ家プールも別棟にあり。昼過ぎに行くと混むし、ウェイトレスが少な過ぎてわざわざカクテルはビーチバーまで買いに行かなければならない。午前中はガラガラで、スタッフのサービスも良し。フカフカのタオルもどっさりくれるので快適。夫は朝から集まりでいないので、コーヒーと本を持って午前中はここでのんびり過ごしていた。ランチもほぼ毎日プールサイドのレストランで。
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ベネチアンホテル内に流れるフェイク運河とゴンドラ。
お店とレストランがたくさんあって便利。
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部屋。
リビングエリアとダイニングエリア。
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寝室エリアとオフィススペース。
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パウダールームとシャワールーム。
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部屋は広々して使いやすく、騒音も無く快適だった。
でも派手目のホテルなので、部屋によっては大騒ぎしているグループもいた。
部屋にコーヒーメーカーがないので、いちいちルームサービスを取るか(時間がかかる)、1階のカフェまで買いに行かなければならない。2時間置きにコーヒーを飲む私には不便です。

(続く)

読書ですが、前二冊があまりにも暗いので、寝る前の時間帯だけはこちらを読んでいました。アン・タイラーのずっと読もうと思っていた本です。

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Title: Ladder of Years
Author: Anne Tyler
Publisher: Knopf
Publication date: 1995
Pages: 325 pages

But if you never do anything you can’t undo — she set a hand on the splintery railing – you’d end up doing nothing at all, she thought.


積み重ねて来た愛しいはずの歳月に、疑いを持つ時ってあると思います。これでよかったのか。もっと別の道があったのではないか。子供の手も離れ、医師の夫も仕事でそれなりに評価を得て、何不自由なく幸せな主婦であるDeliaは、最近モヤモヤすることだらけ。最近亡くなった仲の良かった父親の死も、大きなダメージであった。

もう大きい子供達は、Deliaを口うるさいだけの家事をする人くらいにしか思っていないし、そこそこ上手くいっていると思っていた夫は、どうやらDeliaの父親の病院を継ぐことが狙いだったらしい。

誰からも必要とされない空しさ。そして夫の自分への愛もあやしくなった。子供の頃から同じ家に住み、父親から夫へと家長が変わり、自分の存在に疑問を持ち始めたDeliaは、ある日家族でビーチに遊びに行き、そのまま姿をくらませてしまう。と言ってもアンタイラーですので、重苦しい感じではなく、「あららら」的なね。

見知らぬ町に降り、あまり考えずに週貸しの下宿宿を借りる。医者の家で育ち事務仕事を手伝って来たDeliaは、タイプやら電話の応答が出来るので、町にある唯一の小さい弁護士事務所の事務兼雑用係りの仕事も得るの。

Deliaの突然の蒸発に、家族は驚き、新聞沙汰にもなるわけだけど、Deliaが無事であることを知ると、それっきり音沙汰がなくなるわけです。夫も子供も迎えにも来ず、「まあ一人になって考えたいこともあるんだろうね、邪魔しないよ」みたいな。一方で新しい町では友人、仕事、仲間とどんどん関係が広がっていく。一人では何も出来ないように思われ、自分もそう思っていたDeliaだけれども、どうやらそうでもないらしい。

「自分探し」みたいなものとは違うのね。Deliaは自分が何がしたいのかすらよくわからず、気持ちのモヤモヤや、腹立たしさをどうにかしたいだけなの。普通はここで趣味でもスポーツでも何か没頭出来るものを探したり、忙しくして考えないようにしたり、離婚を考えたりすると思うんだけど、それもまた誤摩化しであることには変わらない。Deliaの行動は直球すぎるけれど、正直ではあるわけです。

一人になって、自分と向き合いつつも、自己分析するわけではなく、家族や友人に説明するでもなく、淡々と間借りした一間で寝起きし、本を読み、ぼーっとし、仕事に行き、馴染みの店で食事をし、図書館で本を借り、また部屋に戻り本を読み、ぼーっとし、、を繰り返すだけ。

いくつかの可能世界は誰にでもあります。結婚した私、結婚しなかった私、子供を三人産んだ私、一人だけ産んだ私、子供のいない私、一人で生きる私、親の面倒を見る私、海外で暮らす私、実家から出なかった私、仕事を続けている私、辞めた私、主婦の私、この夫、あの人と、と。Deliaはまったく別の人生へと、躊躇なくタイムトリップしちゃうわけです。本には人生をやりなおそうとするおじいさんが登場しますが、Deliaの行動はもっと軽やかでで、それでいて自分が納得するまで諦めない頑さがあるのね。ところでそのおじいさんの台詞で、老いた自分の前妻の顔についての台詞がとても気に入った。

I used to sit by her bed and I thought, This is her true face. It was all hollowed and sharpened. In her youth she’d been very pretty, but now I saw that her younger face had been just a kind of rough draft. Old age was the completed form, the final, finished version she’d been aiming at from the start. The real thing at last! I thought, and I can’t tell you how that notion colored things for me from then on. Attractive young people I saw on the street looked so,,,temporary. I asked myself why they bothered dolling up. Didn’t they realize where they were headed? But nobody ever does, it seems.


若い頃の顔は、どんなに美しくても下書きのデッサンに過ぎず、老いた顔がその完成形だという考えは深いではありませんか。

起承転結大きな山場がある小説ではなく、そんなに面白いわけでもなかったのですが、「Deliaは一体どうするんだ?」的な興味が離れず読み進めてしまう本でした。面白いのは、誰よりもDelia本人が一番「Deliaはどうするんだ?」と思っているところなんですけどね。

数年前にドイツで人気のあった映画だそうですね。

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A Coffee in Berlin コーヒー・イン・ベルリン
(2012年)
監督:ヤン・オーレ・ゲルスター
制作:ドイツ

モノクロでジャズィーな映画です。まだどこにも居場所を見つけられないモラトリアムな青年が、ベルリンの町で過ごす一日。時にしんみり、でも全体的にシリアスにならないようコメディのエッセンスで溢れています。これといった内容はないのに、観賞後に線香花火のような余韻を残す映画です。

まだ幼さも残るベルリンの青年二コが主人公です。
ロースクールを2年前にドロップアウトしていながらも、まだそれを父親にも言えず、大学の仕送りで特にすることもなく考え事をしたり、女の子とデートしたりして暮らしている二コ。

自分に優しく生きる草食系青年と言われてしまいそうな二コですが、その分素直で、我慢して生きている周りの大人達の意地悪や詮索にはうんざりしています。
そして時々、孤独で図々しくない老人とだけ、何かを通わせることが出来るみたい。

コーヒーインベルリンと言うタイトルでありながら、二コはなかなかコーヒーが飲めないの。自販機は故障中、ポットは空、手持ちのお金が足りない、あらゆる理由でコーヒーにありつけない。誰か二コにコーヒー入れてやれや!とニート主婦発狂寸前。

今時のベルリンの街がモノクロで映され、トラムや自転車やカフェ、工場、バー、戦争を引きずっている老人、チンピラなど、普段着のドイツの姿に合える。そしてどこにでもいそうな二十代の青年の、小さな日常。二コが明日はどこへ行くのかすらわからないけれど、美味しいコーヒーが飲めますように。

ちなみに邦題は「コーヒーをめぐる冒険」だそうです。これだと行き過ぎというか、コーヒーがメインになり過ぎて違うような。シンプルに「コーヒー・イン・ベルリン」でいいと思うんだけどなー。ダメなのかしら。

週末は移動だー。かったるーい。

ゴーンガールでおなじみの作者ですね。Gone Girlほどではなかったけれど、こちらも引き込まれました。とても哀しいんですけどね。

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Title: Dark Places
Author: Gillian Flynn
Publication date: 2009
ISBN-13: 9780307341563
Format: Paperback
Pages: 349 pages

I have a meanness inside me, real as an organ. Slit me at my belly and it might slide out, meaty and dark, drop on the floor so you could stomp on it. It's the Day blood. Something's wrong with it. I was never a good little girl, and I got worse after the murders.


主人公のLibby Dayは、子供の頃に一家惨殺事件にあい、唯一の生き残った少女。母親と姉二人を殺害した犯人はなんと実の兄のBenで、今は刑務所に入っています。

Libby Dayは、その後母方の叔母さんと暮らしたり、保護を受けたり、犠牲者支援金などで、トラウマ事件を抱えながら人生に方向性も見いだせないまま暮らしていたの。

そんなある日、"KILL CLUB"という殺人事件に興味を持っている人たちと知り合うことになる。彼らはLibbyよりも彼女の事件に詳しくて、また彼らは兄のBenが犯人ではないと確信しているよう。

真の犯人を見つけるために、メンバーはLibbyにお金を払いながらあれこれ調べ直すように促すの。またこの件でLibbyは、24年ぶりに刑務所にいる兄のBenにも会いに行くわけです。本来LibbyはBenが唯一可愛がっていた末娘で、二人は仲良しだったのね。でもあの事件以来、当然ながら音信不通になっていたの。

24年前のあの日。本当は何があったのか。何が起きたのか。当時7歳のLibbyが見たものは何だったのか。過去のナレーターはBenと母親のPattyで、事件の一日を時間刻みで伝えます。同時進行で現在を語るナレーターLibby。過去を恥、家族や思い出を封印して生きてきたLibbyは、事件と向き合い、清算できる日はくるのでしょうか。

登場人物のほとんどはあまり共感できないように書かれてはいますが、中心人物であるDay一家はみんな(母親、子供4人、叔母さんね)本質的に悪人ではなく、むしろ自分を責めるがために荒れた感じになっているところがあって好感すら持てた。

事件に近づいているようで、それでもどうにも腑に落ちなくて、最後畳み掛けるように明かされる展開には驚きというか哀しみというか、ああああ、、、そういうことか、、みたいなね。気持ちはわかるけどやっぱりねえ。もちろん本人が一番気の毒ではあるんだけど。

ラストでLibbyが全てを彼女なりに理解し、再出発出来そうな感じで締められていたのが救いですね。結局彼女は二重にも三重にも幸運だったわけですから、家族の分も幸せになって欲しいものです。

ところでこれも映画化されるのだけど、IMDbで配役チェックしたけど全然私の想像と違った。シャーリーズ・セロンはリビー役には大人っぽ過ぎるような。何かもっと子供っぽさも残る女性を想像していたので、40近くてアダルトな色気ぷんぷんのセロンを使うとは驚き。あ、でも悪女役にクロエはいいかも。


先日誘われて室内クライミングに挑戦してみたのですが・・・・全身筋肉痛でアタタタ・・状態です。日常生活が普通に送れないってどんなですか。こんな全身運動だとは!

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The Imitation Game
制作 2014年
監督:モーテン・ティルドゥム

これプラザホテルの裏のパリスシアターではなんとまだ上演されてました。暗号全般、クロスワードも苦手な私としてはでどうかな?とは思いましたが普通に楽しめました。

ベネディクト・カンバーバッチ演ずるアラン・チューリングは、数学者で、コンピューター計算機の基礎理論を作り上げた人です。第二次世界大戦中、ドイツナチスの絶対破れないといわれていた軍事暗号の解読に成功した方。

ナチスが使用していた軍事用暗号機エグニマの解読は、難しいというよりも"unbreakable"。
エグニマによる暗号を破るには、暗号ルールのキーを見つけなければならないわけだけど、それは”One hundred fifty nine million million million"、つまり159000000000000000000通りもあるわけです。しかもこのキーは数時間置きに変わってしまい、時間までに見つけられなければまた一から取り組まねばならず、つまり人間の手ではどうあがいても無理なのね。


マシーンにはマシーンで対抗するしかないと、人間の手による解読にさっさと見切りをつけたチューリングは、何度も挫折しながら、コンピュータの存在しない時代に、自らの手で電子計算コンピューターを作ります。

テレビですら一般に普及されていない時代です。
チューリングはマシーンが自ら考える(人間と同じではないけれど)能力を持ち、人の限界を突き抜けてくれることを信じてるの。今の時代ですら「機械なんて」と信じない人もいるのに、まだ姿形もない時代にねえ。

暗号という秘密に、チューリングの個人的秘密が交わります。この二つの秘密がもっと上手く絡まると面白かったようにも思うけど、まあ伝記だし仕方ないか(元本は”Alan Turing:The Enigma”)。史実を元にはしているけれど、もちろんフィクションですので、作られた部分もあるでしょうが。

キーラが演じるはジョアン・クラークさん。当時男性だけがカレッジディグリーを取れる時代に数学者として頭角を現すわけですから、彼女もまた「普通と違う」人なのね。二人がどういう形であれ引かれあうのも自然というか必然ですね。
あと「ゲームオブスローンズ」でおなじみの チャールズ・ダンスも出演してるんだけど、彼の行動が一貫性がなさすぎて気になった。あれだけの予算を与えておいて、完成に何年も待って、出来上がると邪魔するとかありえないだろう。

ラストは哀しいのです。政府もこんなめちゃくちゃ優秀な人を、まったく関係ないくだらない理由でダメにしちゃうってどういうことよ。あれだけの頭脳なんだから、その他大勢とは違うわそりゃ。


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ボストンに戻り、遅ればせながらだけど新年会?をやろうと声をかけてもらいました。

絵画教室のメンバーで、今の先生は50代のギリシャ系アメリカ人です。生徒にはギリシャ人もいて、またわたしが最近仲良くなったアルバニア人の子を誘ったので、何となく同じ風貌の集団に・・。場所はIsabella Stewart Gardner Museumのカフェレストランです。ここはクラスの集まりでたまに使うのね。

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この美術館はボストンで私の好きな美術館の一つです。ちょっと雰囲気がニューヨークのクロイスターズミュージアムに似てる。ヴェネチア風ガーデンはシーズン毎にデザインを変えたり、イベントもあるので定期的に来たくなる。
*全館撮影禁止なので画像は全てお借り画像です。写真を撮れない変りに、至る所に画用紙と鉛筆が置かれてあり、「スケッチはご自由に」出来ます☆

美術館はイザベラ・スチュワート・ガードナー(1840 -1924) さんにより1903年に設立されました。美術収集家として有名な方で、資産家でした。自ら美術館を建て、パブリックにも解放したいという夢を旦那さんと持ち続けたようですね。美術館内は全て彼女が世界中から集めたものです。

ボストンと言えばサージェントですが、彼の大作が何点も展示されています。サージェントによるご本人イザベラスチュワートさんの肖像画もあり、これはサージェントがヨーロッパからアメリカに活動の場を移す最初のタイミングで描かれたものです。レンブラントやラファエロ、ミケランジェロのスケッチもあります。
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イザベラさんは目利きで有名な収集家。そのわりにはガツンとした作品が少ないな、という印象を持たれるかもしれません。実は1990年に大規模な窃盗にあい、レンブラントやドガ、マネなどの大作ばかり13点が盗まれたそうです。個人美術館ですしセキュリティーがまだ甘かったのかもしれませんね。残念です。

ヨーロッパ各地から集められた収集品は多岐にわたり、民芸品や書籍、楽器、家具や食器や生活用品等の調度品、衣服など。タペストリー画も見事で、タペストリー画の間にはフランスの古城から取り寄せたそれは巨大な暖炉があり、それは雰囲気のある大部屋です。
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中庭に面した小部屋がいくつもあり、美術館というよりは、豪華なお屋敷に招かれたような気分になれる場所です。有名なボストンファインアーツの近くにあるのですが、こじんまりした味わいのある美術館をお好みの方にはこちらもお進めです。

今月は更新多し。来月からまた移動生活なので、それまで頻度上げるぞ。
1970年代のオハイオのチャイニーズアメリカン一家を描いたCeleste Ng さんのデビュー作。評判もよく売れている本ですね。読みやすく、引き込まれ、簡単な英語と無駄のない構成に夢中になった!内容は重いですけどね。

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Title: Everything I Never Told You
Author: Celeste Ng
Publisher:Penguin Press HC
Publication date: June 26, 2014
ISBN-13: 978-1594205712
Format: Hardcover
Pages: 304 pages

最初のページの最初の行で、主人公は死にます。

Lydia is dead. But they don’t know this yet.
1977, May 3, six thirty in the morning, no one knows anything but this innocuous fact: Lydia is late for breakfast. As always, next to her cereal bowl, her mother has placed a sharpened pencil and Lydia’s physics homework, six problems flagged with small ticks. Driving to work, Lydia’s father nudges the dial toward WXKP, Northwest Ohio’s Best News Source, vexed by the crackles of static. On the stairs, Lydia’s brother yawns, still twined in the tail end of his dream. And in her chair in the corner of the kitchen, Lydia’s sister hunches moon-eyed over her cornflakes, sucking them to pieces one by one, waiting for Lydia to appear.


一口にチャイニーズアメリカンと言っても、サンフランシスコやニューヨークのチャイニーズアメリカンと、オハイオでは、まったく事情が違いますからね。

しかも時代は1970年代の中西部。主役であるLee一家は、お父さんのJamesがチャイニーズアメリカンの第一世代です。カリフォルニアで育ち、アメリカ人として育った彼は、大学でカウボーイの歴史を教えている教授。現在は奥さんと子供の5人家族でオハイオの小さなカレッジタウンに家を買って暮らしているの。

母親の Marilynは白人のアメリカ人。第二世代となる子供たち3人は、全員父親の血を受け継いで、ミックスというより完全にアジアンなのね。唯一中間子のLydiaだけは、見た目はチャイニーズでも、母親の青い目だけを受け継いだの。

物語はこのLydiaの死から始まります。そしてその死は謎です。そしてLydiaは、父親と母親の両方の大のお気に入りだったのね。
いや、お気に入りというレベルの話ではなく、この両親はまるでLydia以外は目に入らないような熱狂ぶりなのね。

中国人としていじめられ、ずっと孤立して育った父Jamesは、美しいLydiaが学校で人気者となり、お友達がたくさん出来ることを願っているし、
かつては医学の道を志しながら、ただの主婦になってしまった母 Marilynは、Lydiaが優秀な成績を取り続け、ドクターになると信じて疑わないの。Marilyn自身、自分の母親と深い確執があって、このこともすべてに絡んで来るのね。

町で唯一のアジア系一家。孤立して、完全に機能不全の家庭で、Lydiaはまさに家族の「鎹(かずがい)」なの。父と母の期待に応え、家族がバラバラにならないよう、いつもいつも心を砕いているのね。パーフェクトな娘だったわけです。そしてLydiaは死んだの。

父と母は絶望し、兄のNathanは、近所の不良で女たらしのJackが事件に関係していると信じて疑わない。そして真実を見極めている唯一の人間は、まだ小さい末娘でネグレクト状態のHannahだけ。

周りは敵だらけだというのに、支えあえない家族。一人一人が自分の殻に閉じこっているの。人種問題で言えば、話題になるのはいつも白人vs黒人問題で、次にメキシコ人。アジア人は家族内で、自分たちでも問題にすらせず、ただただ良い成績を取ること、良い仕事を得る事で解決しようとする傾向があり、親のプレッシャーが重いという子供は多いと思う。

マイノリティで孤立した家族の崩壊。ああ面白かった!と読み終える本ではなく、哀しいトーンが最初から最後まで流れていて、重いです。
けれど、機能不全一家を丁寧に描写し、家族全体の問題を浮き彫りにしています。ベースにはLydiaの死の謎に迫っていくミステリーがあり、無駄な描写もなく、淡々と物語は進みますから、重いストーリーですがどんどん読み進めてしまうでしょう。
そして英語がとても読みやすい。難しい単語はあまり出てきません。分類的には一般書とYAの中間のように思います。

Damsel in Distress「ダムゼル・イン・ディストレス」とは、神話や絵画のテーマやモチーフによくつかわれている「囚われの乙女」のことです。
監督はメトロポリタンのホイット・スティルマンです。何年ぶりの映画だ?

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Damsel in Distress

2011年
監督:ホイット・スティルマン

キャンパス・コメディでしょうかね。

ミッドレベルの架空のアイビーカレッジが舞台で、そこで「自殺予防センター」を運営する女の子たち。何をしてるかというとドーナツを提供したり、タップダンスをさせたりなんだけれども、リーダーのヴァイオレット(Greta Gerwig)を始めとし、キャンパスライフをもっと楽しく、良くしようというミッションを持っている。



社会に出れば悩みは腐るほど出て来るし、大学の間は出来るだけ楽しんでソーシャルライフを充実させようというわけです(と言ってもFacebookとかハイテクの時代ではなく)。

ただ悪い方に流れないようにと予防に重点を置いてるから、頓珍漢だったりするのね。実用的じゃなかったり。

ストーリー自体はこれといった特徴がないのですが、ダイアログが面白い。
本人たちは真剣なんだろうけど、イチイチギャグになるのね。モーテル6じゃなくてモーテル4とか、男の子の選び方とか、真面目に話すから余計おかしい。本質的に善良なので、おせっかいも見ていて可愛らしい。

青春ものはあまり好きではないのですが、主人公がちょっとおばさん臭く耳年増的なので落ち着いてみていられた。ローズだっけ?アフリカンアメリカンの子もいいし、みんな魅力的だけどうるさくない。俳優がもっとギャルっぽく構成されていたら、たぶん見なかった。

ところで大体DVD鑑賞の場合は、最初は普通に何も出さずに見て、二回目にクローズドキャプションで見ます。ここで本当は3回目を普通に見るといいのだけれど、なかなか。数をこなすより同じものを繰り返し見た方がいいのだろうけど飽きちゃうし、義務になると見たくなくなるし、何よりも続けられることと、毎日したくなることを最優先にしようと思う。

映画で英語の場合、台詞が少ないとあまり意味がないので、意外とアニメとかがいいんですよね。
あまり評価が良くない映画なので期待しないで見たんだけど、女の世界のムズムズする嫌らしさに引き込まれたわ。この感じは男には分らんだろうなあ。

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そもそもエヴァ・グリーンが出てるので見ました。エヴァ・グリーンって、ダニエル・クレイグとの”Casino Royale”で始めて見たんだけど、ボンドガールには微妙な気がした。でもジョニーデップとの"Dark Shadows"では「あれ美人?」みたいな。綺麗なんだかよくわからない女優さんなんで、見極めようと見たのね。

”Casino Royale”のエヴァグリーン。
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結果どうかというとやっぱりわからない。雰囲気はあると思うし、スタイルもいいし、たぶん美人なんだけど、老婆のような怖さが。これがフレンチの魔力なのか。

映画はなかなかよかった。
イギリスのエリート女子寄宿学校で(撮影はアイルランド)人里離れた陸の孤島が舞台。エヴァグリーンはここの教師で飛込競技の指導をしてるの。
明るく華やかで綺麗なエヴァグリーンは、他の鈍臭い教師達とは違う魅力に溢れてて、女生徒たちにも慕われてるの。中でも生徒リーダーのダイは完全にエヴァグリーンに陶酔しているし、お気に入りの生徒として可愛がられている、特別の仲なのね。

粋で理解ある人気教師のエヴァグリーン
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そんな中、スペインのお嬢様がこの寄宿学校にやってくることになる。彼女はロイヤルの家庭で本物のプリンセスなわけです。世界中を旅していて、父親の都合でここに少しの間だけ預けられるらしいの。

閉じて守られた閉鎖社会の中に、世界・外の香りをいっぱいに纏いやってきた異分子。しかも彼女は「ここには一時的に仕方なくいるだけ」で、溶け込む気もさらさらない。当然みんなは面白くないし、もやもやしてるのね。

ところがエヴァグリーンはむしろこのスペインのお姫様に魅了されていくのね。華やかで世間慣れしているようで、実は寄宿学校の外にすらろくに出る事も出来ず、市場で買い物すら満足に出来ない彼女は、虚栄や空想の姿を彼女に投射していくのね。本当の自分の姿を受け入れられないから、それは病的になっていくわけです。

スペインのお嬢様は徹底して冷めてるの。エヴァグリーンのメッキもとっくに見抜いてるし、贔屓もうんざり。ダイを含めた他の女性徒も、あからさまなエヴァの態度に半分引きつつ嫉妬したり、もうドロドロ。

ラストがわりとイージーで小綺麗にまとめられていたのがちょっと残念なんだけど、お気に入りや仲間はずれ、嫉妬、和解、依存、また嫉妬と、閉じた女社会特有の息苦しさを堪能できる映画です(堪能したい人がいるのか・・)。