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The Galapagos Affair: Satan Came to Eden (2013)
監督:ディナ・ゴールドファイン、ダニエル・ゲラー

★★☆☆☆

ドキュメンタリー映画です。
1930年前後の欧州。ヒトラーやナチスの台頭、戦争、非人間的な近代化に飽き飽きした人達の中に、楽園や自然を求め、当時まだ未開発のガラパコス諸島へと旅立つ者たちがいました。

その多くが小さな村や集落のある中心的な島、サンタ・クルス島に向ったわけですが、中には本当に誰も住んでいない島を選んだものもいます。

それがこの映画の舞台、フロレアナ島です。ここに最初に居を構えたのはドイツ人医師のFriedrich Ritterで、彼は祖国に妻や家や仕事を残したまま、愛人のDoreと、現代版アダムとイヴのような生活を始めます。

そして彼らの生活を新聞で知ったWittmer一家(父 Heinz、母Margret、息子)が「スイスファミリーロビンソン」とばかりに後に続きやってきます。Margretは当時妊娠中でしたが、Friedrichが医師であるとのことだから、面倒をみてもらえるだろうと楽観視していたようです(実際はFriedrichにあまり面倒を見てもらえず怒りの日記を残しています。でも出産ではやっぱり助けてもらっています)。

次にここに住み着いたのがウィーンから来たEloise von Wagnerという中年女性です。ジゴロを二人抱えた女王様タイプで、映画の撮影をしたり、派手に騒いで注意を引いたり、面倒くさいタイプのようです。

狭い島で、この3家族がギスギスと生活していますが、ある日この面倒くさい女性とジゴロの一人が姿を消します。おそらく、殺されたのではないかという話です。半分ミステリー仕立てのドキュメンタリーとなっていて、このウィーンの女性の失踪が山場になっているようです。

ドキュメンタリー度とミステリー度が中途半端でまとまりもなく、あまり面白くありません。まあゴシップですかね。そもそもこのフロレアナ島に集まった3家族が、みんな自己中で変り者なので、特殊過ぎて興味がわかなかった。いくら楽園でも、数少ない隣人がこんな変わり者なら絶対住みたくないわ。

それよりも、インタビューで時々登場する、サンタ・クルス島に住みついた普通の人達や、そこで生まれた第二世代の子供達に興味が沸きました。ヒッピーだけど平和を愛する親に連れられ、文明から隔離され育った子供達は、ガラパゴスで独自の成長をします。彼らはみなどこか寂しげで、控えめで、自分だけの哲学を持っています。それはニーチェに心酔して自分の哲学を確立しようと躍起になってガラパゴスにやって来たFriedrichよりも、ずっと深いように思いました。

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Title: Nothing
Author: Janne Teller, Martin Aitken (Translator)
Publisher: Atheneum Books for Young Readers
Publication date: February 2010
Format: Hardcover
Pages: 244 pages

★★★★☆


“The reason dying is so easy is because death has no meaning,” he hollered. “And the reason death has no meaning is because life has no meaning. All the same, have fun!”
― Janne Teller, Nothing


ある日Pierre-Anthonは、人生に意味がないと気付き、木に登り、空を見上げ何もしなくなります。彼のクラスメイト達(13~14歳)、「そんなことはないよ、人生には意味があるよ」とPierre-Anthonを説得しようと試みます。

クラスメイトたちはそれぞれ意味があると思う物を持ち寄ります。最初は自分が大切にしているもの、自転車だったり本だったりするのですが、当然そんなものにはPierre-Anthonを説得させる「意味」はないわけで、持ち寄るものがどんどんエスカレートしていきます。
髪の毛、宗教心、死体、犬の首、純潔、体の一部と。

犠牲を払った者が、次の者にさらなる犠牲を強いていき、恐怖ゲームとなっていきます。一方で、残酷な意味の山は大人達の興味をひき、賞賛され、最後は芸術となります。芸術はお金になり、金で売れるならやっぱり意味がないじゃないかとPierre-Anthonにやりこめられ、最後は悲劇で幕を閉じる。

大人の嘘と偽善、子供の残酷さ。とても興味深い本で、いろいろ考えさせるエンディングです。

オリジナルはデンマーク。欧州ではいろいろ賞を取った本で、なんと児童書(!)だそうですが、ヨーロッパではアメリカや日本よりもニヒリズムが普通に空気のように存在している気がするのでそれほど驚くことでもないのかな(子供用のニーチェの本もあるし、そもそもキリスト教文化には伝道の書もあるし)。

意味を持たせる方が社会はうまく機能しますが、意味が個人を上回り、まるでその人のアイデンティティかのように振る舞い始めると、他人のことは批判するけれど自分への批判を許さない人を見下す大人で溢れますよね。でも「意味がない」が主流になると、「だから今を楽しもう」みたいな明るいニヒリズムが増えるならまだしも、退廃的なシニシズムに陥り、やっぱり他人のことは批判するけれど自分への批判を許さない人を見下す大人で溢れそうな気もする。

人生はたぶん、意味がないからこそ意味があるのだと思うけど、そんな言葉をしたり顔で言ったところでやっぱり意味なく響くだけ。だから著者はこの小説を書いたように私は思は思いました。


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今年に入って始めてのブックセールに行って来た。
今週は、今年初の内職もした。辞書を用意したり資料を見て終わる。本格的に始めるのは来月から。

本は気になりつつ読んでいない、カズオ・イシグロの"The Remains of the Day"とかグレアム・グリーンの"The End of the Affair"とかヴォネガットとか。"The Remains of the Day"なんて、買ったの3回目くらいじゃないの?(いつも中古で1ドルくらいで買っているけれども)。この本は読もうとするとなぜか必ず引越しが入るという縁起の悪い本で、読まずにいつも売るかドネーションで手放している私の常連の積読本の一つ。なので、今回はなるべくさっさと読むつもり。ないと信じたいけど、また急な引越しがあるかもしれないし、絶対今月中に読む。ヴォネガットは日本でよく売れている洋書の一つらしいが面白いのだろうか?あんまり気が進まないので積読本になりそう。

一方で、DVDでHBOのJohn Adamsを見ていて、これがとっても面白くて久しぶりにファウンディングファーザーズ物もいろいろ読みたくなった。そういえばボストンに行ってすぐに、フリーダムトレイルを一人黙々とまわったのだった。写真もそのままなので近いうちに整理しよう。来月からはあまりネットも出来なくなるかもしれないし。

by the shores of silver lake

Title: By the Shores of Silver Lake
Author: Laura Ingalls Wilder
Publisher:Harper & Brothers
Publication date: October 20, 1939
Pages: 304 pages

★★★★★

"Home! Home! Sweet, sweet home,
Be it ever so humble
There is no place like home."
    -By the Shores of Silver Lake


今日2月7日はローラ・インガルス・ワイルダーのお誕生日です。
さてこちらは大草原シリーズ5作目(インガルス一家の話に絞れば4作目)です。
ミネソタを出たローラ達は、ここからダコタへと向うわけですが、"Go west, young man"とばかりに進み続けたインガルス一家も、この地でようやく落ち着きます。残りのシリーズ本(4冊)は、全てこの地での出来事となります。ローラはこの土地で結婚し、娘を産み、1894年まで25年間この地に留まります。

前作ミネソタでの生活と、こちらの作品ダコタでの生活の間に、本来はアイオワでの生活が入ります。しかしローラインガルスはこのアイオワでの日々を本にすることはありませんでした。

実はこのアイオワで、Maは待望の男の子(フレディ)を出産するのですね。しかしフレディは一年後に亡くなってしまいます。Maは滅多に愚痴を言わない人ですが、年を取った後も最後まで「フレディさえ生きていてくれたら」と何度も言っていたそうなので、相当のショックだったようです。

Maはその後四女であるグレースを出産。そして一時的にミネソタに戻りますが、精神的なダメージと疲労が重なり、家族全員が高熱と病に倒れます。この一連の家族の病は、メアリーの高熱〜失明という悲しい形で終結します。

そしてダコタ・テリトリー、 De Smetです。ダコタテリトリーのデスメット付近は当時、アメリカンインディアンとの抗争も落ち着き、また鉄道網の広がりもあり、急速に発展していた場所です。Paも鉄道とフリーランドを追ってこの地に来ました。ホームステッド法に基づき160エーカーの土地を得る予定です。

どこまでも続きそうな勢いで延びて行く鉄道の建設、フリーランド、開拓時代のアメリカの荒々しさが伝わってきます。土地を得るシーンは手に汗を握ります。いつもハラハラさせられ、心配してしまうPaですが、フリーランド獲得となり、いよいよ本領発揮です。いざと言う時は本当に頼りになります。

それにしても、メアリーが失明してしまうシーンなのですが、私は子供の頃にテレビで見て、とても恐怖を覚えたんですね。確かメアリーは「何も見えないー!」と大騒ぎしていたような。幼かったので、「盲目になる」という発想すらなく、心から怯え、涙したものです。しかし本ではわりとあっさり書かれています。「目が見えなくなっても、メアリーはレディであった」ということが少し書いてある程度です。メアリーの盲目に関する箇所よりも、愛犬のジャックが死ぬシーンの方が長く、ずっと感傷的に書かれていて、ちょっと拍子抜けと言うか「え、そっち?」みたいな。

ローラはこの後からメアリーの目となり、つねに寄り添い、見えるもの、起きていることを全て説明する役目を与えられます。感情的で興奮しやすいお父さんの性格を受け継ぐローラの説明に、メアリーは時々腹を立て、もっと客観的に、正確に表現するように注意します。ローラが大人になり、小説家になるために必要な要素(情緒豊かであると同時に、注意深い観察眼と豊富な表現力)は、このメアリーとの日々で鍛えられたのではないでしょうか。

いつも思うのですが、大草原シリーズはインガルス一家全員の愛情から生まれた賜物です。インガルス家の誰一人が欠けても生まれなかった、お父さんの、お母さんの、子供達の、家族の物語です。読んでいてこれほど素直に感動したり、楽しめる小説はなかなかありません。小説でありながら、子供目線で語られる開拓時代の歴史書でもあり、本当に素晴らしいと思います。

(前3作の感想:133冊目: Little House in the Big Woods
151冊目: Little House on the Prairie
210冊目 On the Banks of Plum Creek

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The Visit(2015)
監督:M. Night Shyamalan

去年の終わりに見た映画です。”The Sixth Sense”や”Signs”でおなじみのM・ナイト・シャマラン監督の一番新しい作品で、こわ面白い。

一応ホラーではあるけれど、ゴーストや超常現象系ではありません。

この作品、同監督の、何となく名前も似ている”The Village”を思い出した。閉ざされた異常な世界と、一般的評価はあまり高くないけど個人的には好みで楽しめたという点で。

主役の姉弟は、お姉ちゃん(レベッカ/13歳くらい?)と、弟(タイラー/8歳くらい?)です。お母さんと三人で暮らしています。お母さんは若い頃に両親とケンカ別れしているので、レベッカとタイラーは、祖父母には会ったことこがないの。

でもある日その祖父母から連絡が来て、孫達だけで遊びに行くことになるのです。レベッカとタイラーは、そうすればお母さんが恋人と二人で旅行に行けると画作しているのね。いい子たちなのです。屈託がなく、現代っ子で明るくて。

レベッカはビデオ作りにはまっていて、今回の旅行でも、お母さんと祖父母の亀裂を埋める作品に仕上げようと計画中。映画は、このレベッカのビデオカメラを通して進んで行きます。この設定のおかげで、姉弟は自然に観客に語りかけることができ、親近感を持たせます。上手いですね。

祖父母はとてもいい人です。最初は・・・
しかし日ごとにおかしな行動が増えていきます・・・
年だから、病気だからでは説明がつかない何か・・・


タイトル画面がダリオアルジェント風だから、一瞬「あれ?ジェームズワンの映画だったっけ」と混乱した。

怖い映画ではありません。一般的な怖さとは違います。怖がるところなのか、笑うところなのか決められない居心地の悪さがあります。モヤモヤ系恐怖といえば、有名なハネケ監督の「ファニーゲーム」を連想しますが、あんな感じでもなく、残酷でもありません。きょうだいが明るく、最後もちゃんと笑って終わらせてくれます。

出来がイマイチなのは認めますが個人的にはおすすめ。だけど「こんなの薦めんな!」と怒られそうな気もすごくする。






2016.02.02 METのマティス
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絵は部屋の空気を変えてしまう。いい意味でも悪い意味でも。

我が家のリビングは、5年前にMoMAで買ったマティスのポスターを飾っていた。
マティスの絵は部屋の中を、軽やかに元気にしてくれる気がする。

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しかし最近の気分に今の絵がどうもマッチしないので、新しい絵が欲しくなった。
しかし相変わらずマティスがいい。
マティスは特別気に入っている画家ではないのに、部屋に、しかもリビングに飾るにはマティスばかり。なぜだろう。

今回はMETに買いに行ったのだけど、残念ながら今買える中には気に入ったものがなかった。
気を取り直して(!)本物を堪能してきました。
(貼付けてある画像は、全てメトロポリタン美術館所蔵のマティスです)。
マティスの絵の前では空気が軽く弾んでいる気がする。これだ理由は。

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ピンぼけしてしまったけど、この少年なんて凄くいい。なんて綺麗な色使いなんだろう。
ところで"Woman with a Hat"がなくなっている。借り物だったのか。残念。

それとMETで入場時にもらえるメタルのバッジだけど、2年くらい前からこんな感じのただの紙のシールになってるんですね(服から剥がしたのでボロボロですよ)。ペラッペラのただの紙で、本当に味気ない。色もいつ行ってもこの色(紺)なんだけど、決まっているのだろうか。
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以前のメタルのバッジは、カラーも繊細で豊富だから、マメに通ってコレクションしていた(会員なので何回通ってもコストは同じ)。もうその楽しみもなくなってしまい残念。バッジは記念に大切に保管はしておきます。メタルバッジは1971年から続いていた歴史あるものだったのですよ。
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観光客が少なく空いている&外は寒いということで、引き続き二月も美術館巡りを楽しもうと思います。