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Book No.84

Title: The Suspicions of Mr.Whicher: or The Murder at Road Hill House

Author: Kate Summerscale
Pubilshed: 2008
Pages: 384p



事実は小説よりも、何倍も奥深く興味深い・・・。イギリスの田舎町で実際に起きた悲しく忌まわしい事件の全容なのですが、下手な推理小説よりもずっとずっと面白い!そしてやっぱり秋はミステリーですな〜。

マープルが登場しそうな事件ですが、時代はクリスティさえまだ生まれていない中期ヴィクトリア朝のお話。そして実話。事件当時、人々はにわか推理探偵化し犯人当てに燃え、人気作家のチャールズ・ディケンズまでしゃしゃり出てあれこれ推理し始める熱狂ぶりだったようです(・∀・)

This is the story of a murder committed in an English country house in 1860, perhaps the most disturbing murder of its time. The search for the killer threatened the career of one of the first and greatest detectives, inspired a 'detective-fever' throughout England, and set the course of detective fiction.

さて事件はこうです。1860年6月29日金曜日の朝、3歳のまだ幼いSaville Kent君が、ベビーベッドから消えていました。そして喉をかっ切られるという、無惨な姿で発見されたのです。厳重な戸締まりの形跡から、内部、つまり身内の犯行であることがほぼ確定されました。

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Kent家は、数人のハウスメイドと雇い人を抱えた、まあそれなりの家で、屋敷はRoad Hill Houseと呼ばれています。主人であるSamuel Kent氏は59歳(写真↑)、工場の監査官です。
殺されたSaville君は、二番目の奥さんMary Kent(40歳)の子供です。二番目の奥さんとの間には、他に娘が二人います。

最初の奥さんMary Ann Windusは、子供を10人産みましたが、そのうち成人したのは4人です。娘が三人、息子が一人です(Mary Ann, Elizabeth, Constance, William)。最初の奥さんは精神的に病んでいて、すっきりしない死に方をしています。町の噂では、二番目の奥さんとKent氏は、最初の奥さんの生存中から、浮気していたということです。

さて、この事件にかり出されたのが、当代きっての名刑事、スコットランドヤードのJonathan Whicherです。数々の成功に裏付けされた絶対の自信で、犯人を即座に推測し、自供させてしまう凄腕です。そして彼は、最初の妻の子供で、まだ16歳のConstanceに目をつけます。疑惑は彼女のナイトドレスから。まったくクリスティを読んでるようです。しかし物事はそう簡単には進まない。何せDNA鑑定も、指紋調査すらない時代です。そしてWhicherが現場に駆けつけたのは、事件発生から2週間も経っていて、これは致命的でした。

そうこうしているうちに、地元の警察はメイドのElizabeth Goughへと目を向け、作家ディケンズは、Samuel Kent氏とメイドとの浮気説を持ち出す有り様。犯人が確定出来ぬまま、事件は迷宮入り・・・。当代きっての名刑事は、自信と名声を失い、運にも見放され、この事件の少し後にリタイアしてしまいます。

しかし数年後、意外な告白で事実が明るみに出るのです。そして犯人の、事件後も含めた長く数奇な人生に、私は深く感銘を受けてしまいました。。

作者Kate Summerscaleの、徹底的したリサーチがこの本の読みどころです。当時の報道、ニュース記事、噂などを湛然にみっちり書き込んでいます。時々脱線したかのように思えるトリビアネタも多いのですが、それがむしろ当時の雰囲気やら思想を上手く伝えています。読ませます。数々の写真と押絵が何とも言えないダークさを醸し出しています。

事件の起こった時代背景ですが、産業革命後、経済的にも文化的にも最盛期を迎えるイギリスのヴィクトリア朝期(1837-1901年)ですが、貴族階級の華やかなイメージが取り上げられる一方で、労働者階級の人々は、貧困に苦しみ、非人間的な労働を強いられた暗黒の時代でもあります。有名な切り裂きジャックが、ロンドンのイーストエンドで貧しい娼婦を次々と切り裂いたのもこの時代(1888年)です。

文学的な出来事は、
1841年、エドガー・アラン・ポー(米)が、史上初の推理小説「モルグ街の殺人」を発行。イギリスでも同時期ディケンズなどが推理小説を書いており、この時代を皮切りに推理/犯罪ものがどんどん出版されます。シャーロックホームズは1887年に登場です。また1859年、チャールズ・ダーウィン(英)の「種の起原」が出版。キリスト教文化に衝撃を与えました。

また本のサブ題ですが2通りあります。
オリジナルUK版は、The Suspicions of Mr Whicher: or the Murder at Road Hill House
USA版は 、The Suspicions of Mr. Whicher: A Shocking Murder and the Undoing of a Great Victorian Detectiveです。


現在洋書レビューだけをまとめたブログを作成中。100冊目に行く前に、本をジャンル別に分けたくて。

さてさてようやく週末です(o・ω・o)。今週は夫の仕事のお手伝いで忙しくて長かった~・・・


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