過ぎ去りしdays
夫婦2人家族、引っ越し妻、海外生活うん年目。いい加減日本に帰りたい・・。
和書 「蓼喰う虫」谷崎潤一郎
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蓼喰う虫

谷崎潤一郎

1928年


若い頃は嫌悪感があったけど、年とともになんとなくしっくりくる谷崎潤一郎

「痴人の愛」に続いて今回読んだのは「蓼喰う虫」。1928年。

これ発表当時、「海草が妖しく交錯する海底の世界を覗く思い」と評されたらしいですよ。これだけでワクワクしちゃいますね。まあ私は最後までその意味がわかりませんでしけど笑。


要と美佐子は小学4年生の息子が一人いる中堅夫婦です。

夫婦仲は悪いわけではないのだが、肌を触れ合うことすらもはやしなくなり(セックスレス)、会話もよそよそしい。

妻(美佐子)には夫(要)が容認している愛人がおり、夫にも贔屓にしているプロの女性がいる(外国人)。モダンな夫婦だ。二人はこんな関係を続けていても仕方ないだろうと、離婚を考えているのだが、離婚するだけの決定的な事件が起きたわけでもなく、また子供のこともあり、なかなか離婚に踏み出せないでいる。

一方で、小説には対照的なもう一組のカップルが登場する。美佐子の父親(義父)とその愛人だ。

義父はおそらく50代半ば~後半で、20代前半の妾(お久)と暮らしている。この二人は封建制を具現化したようなカップルだ。

義父は、純和風の生活を好み、古典芸術を愛する昔気質の男だ。妾のお久にも、着るもの一つ選ばせず自分好みの古くさい格好をさせる。お久も「へえ、へえ」と何でも素直に聞いている。寝る前にはマッサージをさせ、どこにいくにも自分の口に合う弁当を作らせ、柔肌のしっとり感が損なわれるからと言って(そこまでは言ってないけど)、とにかく風呂では石けんも使わせない(かわりにお久は米ぬかと鶯の糞で体を磨いている)。お久は意見を持たず、我のない、黙って言われたことだけする人形のような女だ。

主人公の要は、モダンな妻とモダンな暮らしをしながら、ひそかにこの義父に憧れ、また人形のようなお久に惹かれているところがある。お久というよりも、お久的なものにだが。



この要の気持ちは正直分からないでもない。年を取ると特にだろうが、私も男だったらお久のような女の方がいい。美佐子のような女は面倒臭いし、何よりお久のような女の方がしっくりくるような気がする。現代のメイドブームだって、ある意味封建制(主従関係)への憧れのようなものだ。突き詰めると危険な思想かもしれないが、心地いい部分も確かにある。立場をはっきりさせ、役割が決まると楽なのだ。迷いがなくなる。

要の、妻への性欲不振はどこからくるのだろう。お久みたいな女性と、不本意ながらでも結婚していたらそうはならなかったのだろうか。

また妻美佐子も、愛人に選んだ男性はどこか要的な要素があって、いざその彼と結婚しても、要との結婚生活を繰り返しそうな感じだ(実際そのようなことを言われているし)。

そして何よりも、結局この夫婦は別れるのだろうか。ラストの雰囲気からだと、美佐子が父親に説得されて、元さやにおさまりそうな予感もある。

結局この夫婦は、進むべき道を見い出せず、同じことを繰り返すだけなのではないだろうか。


谷崎潤一郎は、大正モダニズムを嫌というほど味わい、昭和の幕開けとともに東京を去り、京都(関西)に移り、徹底的に日本の伝統美を追い求めた人だ。

彼の小説には、良い意味でも悪い意味でも、日本人らしい日本人が描かれている。西洋への憧れやコンプレックス(近代化)と、昔ながらの封建的な日本の心地よさで揺れる日本人。

ところで小説は、1928年の発表で、昭和というよりは大正の香りが漂うのだけれども、日本というのは本当、このころから全然変わってないんだなと思う。

例えば、小父の高夏は、ドルの相場で損した得したとやっているし、また美佐子がコンパクトを取り出して化粧を直し、父親が咎めて二人でやり合う場面もある。近頃の女は平気で人前で化粧直しをするけどそんな姿は人に見せるものじゃないんだぞ、と父。何よ、知り合いの女性なんてレストランの席でコンパクトを取り出すわよと反論する娘。程度が違うだけで、電車内での化粧論争と本質的にはまったく同じじゃないですか。



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*国内外問わず、夫の仕事の関係で引越しばかりしている40代の主婦(子供なし)です。最近は海外ばかりでいい加減日本に帰りたいです。
*すぐ引っ越すので知り合いが出来にくい/単独行動/インドア派、と引きこもり要素たっぷりではありすが、前向きに楽しみを見つけながら暮らしていければと思っています。
*読書や映画の感想を時々書いてます。



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