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141冊目: Interpreter of Maladies

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Book No.141

Title: Interpreter of Maladies
Author: Jhumpa Lahiri
Publication date:1999
pages: 198pp

Jhumpa Lahiriのデビュー作。デビュー作でしかも200ページ足らずの短編集ですが、彼女はこれでこの年の賞を総なめし、若干33歳でピューリツアー賞を受賞。読もう読もうと思っていた1冊ですが、表紙をめくった後は、一気読み。短編集はあまり好きじゃなかったはずなのですが・・・。

While the astronauts, heroes forever, spent mere hours on the moon, I have remained in this new world for nearly thirty years. I know that my achievement is quite ordinary. I am not the only man to seek his fortune far from home, and certainly I am not the first. Still, there are times I am bewildered by each mile I have traveled, each meal I have eaten, each person I have known, each room in which I have slept. As ordinary as it all appears, there are times when it is beyond my imagination. --- "The Third and Final Continent"


短編9編からなるこちらの小説。インド系アメリカ人(イギリス人?英国生まれ、アメリカ育ちらしいです)の作者ならではの、アメリカで生活するインド人カップルの話が主です。舞台はボストン、ケンブリッジ辺りが多く、アカデミックな香りが漂います。視点が細やかで、小さな心の動きと、そこから生じる大きな変化を描くのがとても上手い。話の流れがスムーズで、ストーリーの運び方も上手く引き込まれますね。

気に入ったものをいくつか。

・「Interpreter of Maladies」

表題作でもあるこちらの短編。インドで観光ガイドをしている主人公は、アメリカ育ちのインド人夫婦の案内をします。週末は観光ガイド、平日は病院で患者さんの通訳をしている彼ですが(多言語のインドらしいですね)、そのことになぜか深く関心を寄せて来る奥さんに、彼も悪い気はせず、だんだん妄想も膨らみますが・・。
純粋な中年のインド人男性と、アメリカ育ちの若い女性と。読者ですら「ないない」と分かるシチュエーション。ある程度予感させる結末ですが、それにしても・・せつない(苦笑)。

・「A Temporary Matter」

電気工事が始まり、毎晩一定の時間停電になるというお知らせが入る。子供のいない若い夫婦は、このところすれ違い気味。これを機会に、停電の間、毎晩、お互いまだ告げていなかった秘密を一つずつ話すことにします・・・。これはちょっと怖い。何が出て来るのか、ヒヤヒヤしながら読みました。そしてやっぱり来ました妻の告白。しかしそれを上回る旦那の告白。旦那さんの視点で描かれていますが、妻側バージョンもぜひ読みたい!って気分になりますよ。

・「A Real Durwan」/「The Treatment of Bibi Haldar」

アメリカが舞台となっているお話が多い中、こちら2編はインドが舞台。インドが舞台だと、ガラっと印象が変わり興味深い。まず、登場人物の生活ランクがかなり貧しくなりますね。その一方で、全体的に生き生きとしているし、ご近所、お隣さんとの絆がぐんと深まる。孤立し、冷めた感じの話が多いアメリカ生活バージョンから、熱々で息苦しいほどの共同体インド生活。
しかし、とりあげているのは、どちらもその共同体からはみ出た独身女性なので、アメリカバージョンと同じように孤独感はつきまといます。もう若くはない独身女性の扱われ方は、そのまま国の資質を表します。前者はせつないラストですが、後者はインドの良い部分が描かれてほのぼのします。

・「Mrs. Sen's」

こちらはそのアメリカ舞台とインド舞台、中間のようなお話。登場する女性は、旦那さんの仕事でアメリカにやってきたけれど、インドでの生活が恋しくてだんだん病んでいきます。鮮度のいい魚を探しまわり、車の運転を拒否したり。アメリカで生活したことがある方なら、これだけで奥さんの頑固さを見て取れるでしょう。
でも気持ちもすごく分かります。地元のみんなには、アメリカでいい暮らしをしてると思われてるけど、実際はこんなにひどいと嘆くところとか。この奥さんは子守りのバイトをするのですが、その少年の視点で描かれています。たわいもない主婦の鬱々した感情ですが、それを見守る少年に何かを残します。

・「The Third and Final Continent」

母国からイギリス、そしてアメリカのボストンに仕事を得てやって来たインド人青年と、下宿屋の、世紀を生き抜いた老婦人のお話。何もかも勝手が違う新大陸、そこに母国で縁談が決まったお嫁さんがやってきます。
アメリカという新転地と、インド式の風習、月に人類が到着した年、一世代前の女性、コーンフレークとインドカレー。
二つの時代、二つの文化、二つの大陸の混ざり合いが、興味深く、ユニークな視点で描かれています。おすすめの作品です。

この他、若夫婦のすれ違いを描いた「This Blessed House」、不倫をしている若い女性の視点で書いた「Sexy」も、若い作家ならではで、とても面白い。

とにかくこの本の何が凄いって、外れが無い。どれもこれも数ページでそれほど時間もかかりませんし、短編集が好きな方も、そうでない方にもおすすめです。


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Posted by koburii on  | 2 comments 

2 Comments

hinajiro says..."先越されたぁ!"
 私もこの本を読みたくてずっとリストに入れてありました。
 こぶりさんのレビューを読んだら、ますます読みたくなっちゃった。来月中には手に取ってしまいそう!
2012.05.31 00:56 | URL | #- [edit]
koburii says..."Re: 先越されたぁ!"
>  hinajiro さん

あはは。私も同じです。
ず~っとず~っとず~っと(苦笑)
リストに入ってて、やっと読んだ感じで。
これは良いです。久々に短編集で十二分な満足感を味わいました。
彼女は長編も評判いいみたいなので、今度他の作品も読みたいです


2012.05.31 10:05 | URL | #- [edit]

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