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和書「原稿零枚日記」

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タイトル:原稿零枚日記
著者:小川洋子
発行日:2010年10月

光の射さない深海で、少しずつ自分を失ってゆくのはどんな気分だろうかと考える。尾鰭が消化液で溶かされてゆく時、 あるいは雌の血流に飲み込まれて頭が退化してゆく時、 二度と元には戻れないことを悟り、絶望したりするのだろうか。 それとも心は深海の底と同じように静かなのだろうか。せめて痛みは感じないで欲しいと思う。ちょっと尻尾が熱いな、頭が窮屈だなと思っているうちに、すべては滞りなく済んでゆく。そうであって欲しいなと願いながら、眠りにつく。(原稿零枚)〜原稿零枚日記〜

あらすじはいくらでも書けるけど、自分の小説が書けない作家の日記。

小説なのか日記なのかエッセイなのか、はたまた現実なのか妄想なのか。目次が巻末に置かれているのも意味があるのですね。最初は著者自身の日記、つまりエッセイかと思いながら読み進めたら、いつものように世界がどんどんcuriouser and curiouser。

本来どういうポジションの本なのかは知りませんが、私は単純に可笑しくて、よく笑った。生活課の指導員とか、芸術ツアーのガイドとか、いや、いるってこういう人。時間に守らないと「熊が出ます」とか。私なんて奥日光の観光で実際怒られたことあるもの。それに逆らえずなぜか素直に従う自分とかあるある。一方で時々あらわれる静かな死というか消滅がしんみりと、そしてじわりとくる。

次の日(月)
一日、三島由紀夫の『金閣寺』を読んで過ごす。主人公の溝口が徒弟仲間の鴨川と一緒に南禅寺を散歩する場面ばかり、繰り返し読む。


四月のある日(土)生活改善課のRさんと、作家のWさんと一緒に盆栽フェスティバルへ行く。

次の日(月)
雨。生半可ではない、情け容赦のない雨。これが昨日降らなくてよかったと思う。昨日もらった借り物競走の参加賞を明けてみる。


主人公の女性は物書きらしく、日記の終わりに今日は何枚原稿を書いたかが記されていますが、でも大抵ゼロ。

子供もいないのに、小学校の運動会に行く「運動会荒らし」。毎年いかに効率よく多くの運動会に参加できるかを練りに練ります。「パーティー荒らし」「子泣き相撲大会荒らし」にも目を光らせる。また、生活改善課の指導を受けたり(私も受けたい)、盆栽フェスティバルに行ったり、健康スパランドに行ったりします。

その一方で、小説のあらすじを書くことを得意とし、文学選考会で本を読んであらすじを書くバイトをしたり、「あらすじの書き方」教室の講師をしています。

小川洋子さんの小説はどれも、不思議で幻想的であると同時に、妙なリアル感があると個人的には思うのですが(「猫を抱いて〜」を読んで以来、隙間を見るとミイラがいるような気がして仕方がない)、こちらの本もまさにそんな幻想性と現実が上手い具合にミックスされていて、独特な魅力を出しています。

ところでこの「あらすじ教室」参加したいなあー。あらすじって、思っているよりずっと難しいですよね。私も実はあらすじは上手く書けない。なので感想ばっかり書いている。

私はすぐにコツをつかんだ。一通り読めばだいたい全体の構造と中心の流れ、そこから広がる支流の様子が、原稿用紙に透けて見えてくる。すると同時にあらすじの全体像も浮かび上がり、どこを出発点にしてどういう方向へ向ったらいいかがぼんやりと分かる。この時点では、あくまでぼんやりとで構わない。最も大事なのは、流れの底に潜む特別な小石を二つ三つ見つけることなのだ。〜原稿零枚日記〜

小石ですよ、小石。この小石が見つけられないから書けないんだな。うーん小石。これってやはり感性の問題なのでしょうか。

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