過ぎ去りしdays
散歩・本・映画・おやつ

プロフィール

koburii

Author:koburii
HN:こぶり
国内外問わず、夫の仕事の関係で引越しばかりしている40代の主婦。



カテゴリ



月別アーカイブ



和書「神様のいない日本シリーズ」他

週末は野球を観てきました。
デイゲーム?4時スタートのやつ。
今シーズン初です。
去年は4〜5回足を運びましたが、今年は何回行けるのか。引越ししだいです。

CIMG7936.jpg CIMG7830.jpg CIMG7832.jpg

メンバーもすっかり入れ替わって寂しい気もするが、全体的に若返っていい感じのヤンキース。
カノーもすでに中堅選手ですよ。

野球といえば、最近読んだ本でこれも面白かった。

「神様のいない日本シリーズ」
田中慎弥

41YE4RlCLSX230.jpg

登場人物は父と息子。とはいっても息子は部屋にひきこもって出てこず(語らず)、父親がドア越しに一方的に話かける形で進みます。

聞こえるか、香折。父さんは廊下に座って話をする。この扉は開けない。断っておくが、自分の部屋に逃げ込んだお前と向き合うのが怖いというわけじゃない。ただ、ついさっき母さんとお前と三人で、食卓で話をしていた時、顔を突き合わせて話すとお互いの目つきとかちょっとした仕草とかが気になって、言いたいことが言えなかったり相手の話が聞き取れなかったりするもんだって、父さんは思ったんだ。〜神様のいない日本シリーズ〜

このように始まる父さんの語り。息子の香折くんはどうやら学校でいじめにあっていて、そのイジメも、男のくせに香折(かおり)という名前だとか、お前のじいさんは豚を殺したとか、身内絡みなものです。わたしたちは本1冊かけて、どうして父さんは女の子みたいな名前を息子につけたのか、どうしておじいさんは豚を殺したのかを知ります。

そしてそれは1986年の奇跡の日本シリーズであり、ベケットの「ゴドーを待ちながら」であり、神様の忘れものであり、初恋の話であり。

やりたいことが出来なかった団塊世代、やりたいことはわからないけどやりたくないことはわかる団塊ジュニア世代、やりたいことをみつけなくてはならないジュニアの子供世代。3世代、ジェネレーション的な話と、野球でつながる親子の物語。展開が予測出来ず読者を引き込みます。で、私はアラフォーの父さんと同世代なので、この年の日本シリーズはよく覚えています。

父親といえば野球です。違いますかね。父親は野球だったよ私の世代は。小さい頃にいなくなった私の父も、巨人の話ばかりしていたし、巨人が負けると口をきかなくなる人だった(ちなみに私はこの時代は掛布バース岡田の阪神ファンだった)。祖父と父、父と息子、照れ屋で気持ちを伝えることが苦手な男たちが、野球で、バットで、伝えようとしたこと、伝えられなかったこと。

笑ったり、しみじみしたり、楽しかったです。他の作品も読みたいと思いました。



「何者」
朝井リョウ

51Xur5fqCsLSX230hyetrrreuywijshuyrtee.jpg

主人公は就職活動中の学生6人。
就活の進み具合や今取り組んでいることを、毎日顔を合わせていても、ツイッターやフェイスブックで報告しあう仲間たち。楽しんでやっている子もいれば、冷めた目でみてしまう子もいるんだなろうなあ。知らなくてもいいことまで知っちゃったりね。
自分は何者なのか。何者かになれるのか。同じ大学で同い年の友人達と、自分との違いは何なのか。

SNSなんかで感じるモヤモヤをきちんと言語化してくれるので、同世代は特に読んでいてたぶんスッキリするのがこの本の魅力に一つ。スッキリ度が高い分、ラストで一緒にしっぺ返しを食らうのですが。

寒い、と俺は思ってしまった。
ギンジは今、誰にも伝えなくていい段階のことを、この世で一番熱い言葉をかき集めて、世界中に伝えようとしている・・・甘い蜜でコーティングしたような言葉を使って、他人に、理想の自分を想像してもらおうとしている。想像。想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。他の人間とは違う自分を、誰かに想像して欲しくてたまらないのだ。

それらしい言葉を使ってるだけじゃ何にもなれないんだって。そんなところを誰かに見てもらいたいと思ってるうちは、絶対何にもなれないんだって。〜何者〜


友達同士の言い合いの場面は、毎回かなりドキドキしました。いや、ここまでハッキリ言いあえる仲間なら、たぶんとっても素晴らしい。

でも大人も芸能人も著名人までが、一生懸命SNSやブログなどを通して何者かであることを証明しようと躍起になってる昨今です。若い子ならなおさらでしょう。逆に、自己顕示欲をコントロールできる若者がいたらすごいよね。

隆良くんは、ずーっと、自分がいまやっていることの過程を、みんなに知ってもらおうとしてるよね・・・誰かと知り合った、誰かの話を聞いた、こういうことを企画している、いまこういう本を読んでいる、こういうことを考察してる、周りは自分にこういうことを期待しているとか

十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所で見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって 〜何者〜


学生さんだけでなく、SNSやTwitter世代なら誰でも夢中になってしまうことでしょう。一度読み始めると、本を置けない毒性もあるのでご注意を。

ただTwitter上のつぶやきで構成されてる箇所が多く、小説を読んでいるというよりは、読書中ずっとネットをしてる気分でした。それも売れる理由か。



「ひとり日和」
青山七恵

1102892845gyryegtswou.jpg

高校を卒業してフラフラしていた知寿は、唯一の家族である母親の中国行きをきっかけに、母の昔の知り合いで、東京で一人暮らしをしている吟子さんの家にお世話になることになる。吟子さんは70歳の老女で、猫を飼って一人暮らしをしている。

唯一の肉親である母親とも、上手く関係が築けていない主人公の知寿は、人と上手くコミュニケーションが取れない。おそらくかなり孤独なのだけれど、その寂しさにまったく注意を向けていないので自分でも気がついていない。

学生でも、社会人でも、主婦でも、子供でも、年寄りでも、なんでもない存在。家族もいなくなり、誰の誰でもない存在の主人公が、誰の誰でもない老女と送る日々。

置かれている境遇も性格も、あんまりよろしくない主人公だけど、必要以上に自分を責めたり、良い子ぶろうとしないところが意外と好感がもてた。お年寄りに優しくないところもいい。

同居人の吟子さんは、70も過ぎ、家族もいない。知寿と同じように、何でもない存在であるが、何となく楽に生きているように知寿には見え、それが羨ましいというか嫉妬してしまう。

わけのわからない盗癖のある知寿。一方こっそり知寿の化粧品を使ってすっとぼけている吟子さん。かたや若い肌を見せつけ、もう片方は年寄りのリア充ぶりを見せつけたり、ちょっとした女のバチバチもあるが、それも湿気たマッチをこすりあわせた程度なのがおかしい。

何の責任も、社会的な利害関係もなく、恋愛感情ももちろんない一時的な間柄の中でだけで生まれるある種の関係。不思議と自分の人生に影響を与えていく何でもない人たち。特別大きな意味はないけれど、私たちの人生の心像をつくっている何でもない景色たちを、若い著者は恥じることなく、かといって固執することもなく、絶妙な距離を保ちつつ描ききっている。
関連記事


トラックバック

トラックバック URL
http://koburiland.blog104.fc2.com/tb.php/759-6cd86f5d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)