184冊目"Doctor Sleep" リカバリー

147672765ZZZZ.jpg

Title: Doctor Sleep
Author: Stephen King
Publisher: Scribner
Publication date: 9/24/2013
ISBN-13: 978-1-4767-2765-3
Format: Hardcover
Pages: 531 pages

これもだいぶ前に読んだので忘れかける前に・・

恐怖心、自分の弱さ、不安に負けると、人は簡単に悪の道に引っ張られてしまいます。反対に恐怖心に打ち勝ったとき人は、まさに次元が上がる成長を遂げ、新たな世界を見いだすことでしょう。

スティーブン・キングの小説にはよく恐怖に挑む若者が登場しますよね。恐怖はいろんな姿で現れます。そして主人公は、時には恐怖に打ち勝ち、時には負ける。負けるバージョンだとホラー度も高まり怖いのですが、勝つバージョンは味わい深い作品になっていたりします。

"Doctor Sleep"は"The Shining" の続編です(といってもシャイニングを読まなくても大丈夫だと思います)。"The Shining" は、雪で冬の間だけ閉鎖されるオーバールックホテルの見張り番兼管理人として雇われた父Jackと、その妻Wendy、そして5歳の一人息子Dannyの話でした。Dannyは’Shining’という不思議な力を持っていました。しかしオーバールックホテルは邪悪な力が支配していて、そもそもアルコール依存症で冴えない小説家であるJackはこの力に打ち勝てませんでした。WendyとDannyは何とか助かりましたが、計り知れない恐怖と傷が心に残ったことでしょう。

"Doctor Sleep"は、その後生き残ったDannyの物語です。月日は流れ、Dan(Danny)も中年と呼ばれる年齢に差し掛かっています。過去の亡霊から逃れるようにお酒に走り、父と同じようにアルコール依存症になってしまっているのね。今はAA(アルコール依存者の会)のメンバーとなりなんとか禁酒出来ているようです。

幼少期のトラウマを抱えながらもニューハンプシャーのホスピスでケアテイカーとして働きながら静かに暮らしている。患者を安らかに逝かせることが出来るのでDoctor Sleepとも呼ばれている。
Danは一人の少女と知り合います。少女はAbraといい、Danと同じく'Shining'を持った少女です。そしてこの少女をThe True Knotという一団が追っています。The True KnotはAbraだけでなく、’Shining’を持つ子を必要としているのです。ひどい目的なのですよ。

この少女との縁で、Danの新たな戦いが始まります。そして悪夢よ再び。父ジャックが負けた場所、あのオーバールックホテルへ戻ることになります。

雪で密閉されたホテル。アルコールと邪悪な霊でおかしくなっていく父親と、その父におびえる母親と3人で過ごした「あの冬」。実の親から殺されそうになった思い出。忌まわしい過去、つきまとう亡霊、夜な夜な現れる悪夢、機能不全家族で育った幼少時代、アルコール依存。ひどいトラウマから、人は解放されるのでしょうか。傷を癒し新しい人生を始めることが出来るのでしょうか。依存症から立ち直れるでしょうか。YES、YES、YES、というキングの声が聞こえてきそうです。もちろんそれには痛みも犠牲も伴いますが。ホラー小説としても楽しめますが(そんなに怖くないけれど)、トラウマやアディクションからのリカバリーものとして読むこともできると思います。

私もこの小説を通して知ったのですが、スティーブンキング自身、昔はかなり危険なアルコール中毒患者だったらしいです(コカインや薬物依存でもあったそう)。幼少期のひどい貧乏や、父親の蒸発と母親の不安定な精神状態が、キングのトラウマだったようですね。そしてまさにジャックがそうであったように、"The Shining" を書いた頃はアルコール中毒で家族も巻き込み大変だったみたいです。でもアルコール依存がひどかった80年代後半くらいまでの作品に、ホラーとしての傑作が多いのも事実なわけで、そのへんが何ともね。


関連記事

Trackback

URL
http://koburiland.blog104.fc2.com/tb.php/851-7504af3a
この記事にトラックバック(FC2Blog User)

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

プロフィール

koburii

Author:koburii
HN:こぶり
*国内外問わず、夫の仕事の関係で引越しばかりしている40代の主婦(子供なし)です。最近は海外ばかりでいい加減日本に帰りたいです。
*すぐ引っ越すので知り合いが出来にくい/単独行動/インドア派、と引きこもり要素たっぷりではありすが、前向きに楽しみを見つけながら暮らしていければと思っています。
*読書や映画の感想を時々書いてます。

カテゴリ

月別アーカイブ

Copyright © koburii