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190冊目"Empty Mansions" ただの超大金持ち

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Title:Empty Mansions: The Mysterious Life of Huguette Clark and the Spending of a Great American Fortune
Authors: Paul Clark Newell, Jr., Bill Dedman
Published: September 10, 2013
ISBN-13: 978-0345534521
Hardcover: 496 pages

非常に興味深い内容で、リサーチも十分で読ませる本なのですが、読後に、わたしは何でこれを読んだのだろうみたいな気持ちにならなくもない。

ノンフィクションです。ジャーナリストである著者が家を探しているうちに、誰も住んでいない数々の豪邸の存在を知ります。西はカリフォルニアから東はコネティカットまで。持ち主はマンハッタンの超高級コンドもいくつも抱えていたわけですが、そちらにも誰も住んでいなかった。
数々の空っぽな(でも維持管理は莫大な費用をかけてきちんと行われている)豪邸の持ち主の名Huguette Clark 。2011年に何百億という遺産を残して104歳で亡くなった独り身のおばあちゃんです。
square feet
(お借り画像)
2014051153117.jpg
(5thアベニューのこちらの写真は先日遊びに行った時撮ってきました)

さてHuguette Clarkおばあちゃんとは何者なのか。なぜ空っぽの豪邸をいくつも所有したままなのか。なぜそんな金持ちなのか。
一言で言えばWilliam Andrews Clarkの娘で、彼の遺産を相続したからです。
で、William Andrews Clarkとは何者か。

1800年代後半のアメリカ。ゴールドラッシュ〜独立戦争と激動の時代に上手く乗り、農家の少年から商人、鉄道、銅の採掘、銀行、政治家となり莫大な財産を築いた人です。

カーネギーやJPモルガン、ロックフェラーと同年代で、当時は彼らと同等もしくはそれ以上の財産を持っていた人です。当時でニューヨークで一番の豪邸を建てます(これは彼の死後誰も維持出来なくて壊されてしまいます)。しかしカーネギーやロックフェラーやJPモルガンと比べると、まったく後世に知られていないし、尊敬もされていません。彼は社交家ではあったのですが、文化的な施設への寄付や大学やホールを建てるなどしなかったし、ビジネスの後継者を育てることもなかった。そのくせ無理矢理政治家になろうとしたことが致命的だったようです。ただの金の亡者で権力欲の塊ととられたようです。

そして財産を受け継いだ娘、Huguette Clarkは、本当にまったく何もしなかった人です。Huguette Clarkのお母さんであるAnnaは、William Andrews Clarkの二番目の妻で40歳も歳が離れていたんですね。娘か孫ほどの奥さんで、社交も嫌いだった人らしく、娘たちと家にいることを好んだようです。William Andrews Clarkは既に高齢ですので、残された母と娘は、有り余る財産に半ば途方に暮れながら、まったくと言っていいほど、何もしてません。贅沢には暮らしています。周りの友人知人身の回りの雇い人にも気前よくお金を配る人なんですが、気持ちばかりの寄付を除き、これといった社会的活動は一切していない。

Huguette Clarkは母親が亡くなってからも、一人で80歳くらいまではニューヨークのマンションで暮らしています。でも一度エマージェンシーで病院に担がれてから、そのまま病室に居残ることを選び、104歳まで20年暮らします。

カリフォルニアやコネティカットの豪邸も、セントラルパークを一望する5,000 square feetのマンションの部屋々にも、何の未練も示さず、元気になっても戻ろうとせず、最後の20年暮らし続けたのは小さな普通の景色もない病室。そこからの眺め。
Huguette
ここでお医者さんたちと、「マダムに全てを捧げた」と言い切る専属ナースが側にいる暮らしを、彼女は最後に選んだのですね(彼女はHuguetteから遺言で5億円受け取った)。

彼女の人生は幸せだったのだろうか。恵まれた人生であったことは確かだと思う。大恐慌などもあった時代に桁外れの財産を持ち、欲しい物は何でも手に入れ(日本人形など人形のコレクションには並外れた情熱を持っていたらしい)、嫌なことは何一つしないでよかった。友達もたくさんいたし、可愛がって、かつ慕ってくれる姪っ子や甥っ子もいた。高齢になると24時間自分の世話をしてくれる献身的な人を雇い、不安とも無縁だった。104歳まで長生きし、記憶力も最後まで抜群で痴呆とも無縁。お金もあり、健康で、仲の良い母とずっと一緒に暮らし、苦痛や病気とも無縁の人生だった。

一方で、一度した結婚もすぐ別れて母親に元に戻ってしまうし、人間関係も、生活も、新しく開拓することを極端に嫌った人のようだ。居心地の良い場所から出なくても許された人生だった。誘拐におびえて旅行も外出もあまりしなかった。彼女の人生は、お金だけでなく住まいも友人関係もみんな、彼女の父と母が築いたものが全てで、自分では何一つ開拓しなかった。豪邸、もう誰も住まず、訪れさえしないのに、売ることも手放すこともせず、ただただ親が生きていた時と同じ状態に保っていた。父親の冒険的人生とはなんとも対象的なものだった。

あれだけのお金があって、社交すらもしなかったというのは、別の意味で凄いような気がする(日本の文化に特別な興味を持っていたというのも面白い)。120%自分のペースで生きられた幸運な人だ。
けれどやっぱり、なんとも言えない空虚感が残るのはなぜなんだろう。Emptyな豪邸が、彼女自身を表しているような気がしないでもない。

私は彼女の描く絵が結構好きで、特にこの5thアベニューから見るダウンタウンの灯りがなんとも言えない味がある。残念ながらこの南の窓は、隣に新しく建ったマンションのせいで塞がれて今はありません。
Empty Mansions 201417 159


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