1970年代のオハイオのチャイニーズアメリカン一家を描いたCeleste Ng さんのデビュー作。評判もよく売れている本ですね。読みやすく、引き込まれ、簡単な英語と無駄のない構成に夢中になった!内容は重いですけどね。

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Title: Everything I Never Told You
Author: Celeste Ng
Publisher:Penguin Press HC
Publication date: June 26, 2014
ISBN-13: 978-1594205712
Format: Hardcover
Pages: 304 pages

最初のページの最初の行で、主人公は死にます。

Lydia is dead. But they don’t know this yet.
1977, May 3, six thirty in the morning, no one knows anything but this innocuous fact: Lydia is late for breakfast. As always, next to her cereal bowl, her mother has placed a sharpened pencil and Lydia’s physics homework, six problems flagged with small ticks. Driving to work, Lydia’s father nudges the dial toward WXKP, Northwest Ohio’s Best News Source, vexed by the crackles of static. On the stairs, Lydia’s brother yawns, still twined in the tail end of his dream. And in her chair in the corner of the kitchen, Lydia’s sister hunches moon-eyed over her cornflakes, sucking them to pieces one by one, waiting for Lydia to appear.


一口にチャイニーズアメリカンと言っても、サンフランシスコやニューヨークのチャイニーズアメリカンと、オハイオでは、まったく事情が違いますからね。

しかも時代は1970年代の中西部。主役であるLee一家は、お父さんのJamesがチャイニーズアメリカンの第一世代です。カリフォルニアで育ち、アメリカ人として育った彼は、大学でカウボーイの歴史を教えている教授。現在は奥さんと子供の5人家族でオハイオの小さなカレッジタウンに家を買って暮らしているの。

母親の Marilynは白人のアメリカ人。第二世代となる子供たち3人は、全員父親の血を受け継いで、ミックスというより完全にアジアンなのね。唯一中間子のLydiaだけは、見た目はチャイニーズでも、母親の青い目だけを受け継いだの。

物語はこのLydiaの死から始まります。そしてその死は謎です。そしてLydiaは、父親と母親の両方の大のお気に入りだったのね。
いや、お気に入りというレベルの話ではなく、この両親はまるでLydia以外は目に入らないような熱狂ぶりなのね。

中国人としていじめられ、ずっと孤立して育った父Jamesは、美しいLydiaが学校で人気者となり、お友達がたくさん出来ることを願っているし、
かつては医学の道を志しながら、ただの主婦になってしまった母 Marilynは、Lydiaが優秀な成績を取り続け、ドクターになると信じて疑わないの。Marilyn自身、自分の母親と深い確執があって、このこともすべてに絡んで来るのね。

町で唯一のアジア系一家。孤立して、完全に機能不全の家庭で、Lydiaはまさに家族の「鎹(かずがい)」なの。父と母の期待に応え、家族がバラバラにならないよう、いつもいつも心を砕いているのね。パーフェクトな娘だったわけです。そしてLydiaは死んだの。

父と母は絶望し、兄のNathanは、近所の不良で女たらしのJackが事件に関係していると信じて疑わない。そして真実を見極めている唯一の人間は、まだ小さい末娘でネグレクト状態のHannahだけ。

周りは敵だらけだというのに、支えあえない家族。一人一人が自分の殻に閉じこっているの。人種問題で言えば、話題になるのはいつも白人vs黒人問題で、次にメキシコ人。アジア人は家族内で、自分たちでも問題にすらせず、ただただ良い成績を取ること、良い仕事を得る事で解決しようとする傾向があり、親のプレッシャーが重いという子供は多いと思う。

マイノリティで孤立した家族の崩壊。ああ面白かった!と読み終える本ではなく、哀しいトーンが最初から最後まで流れていて、重いです。
けれど、機能不全一家を丁寧に描写し、家族全体の問題を浮き彫りにしています。ベースにはLydiaの死の謎に迫っていくミステリーがあり、無駄な描写もなく、淡々と物語は進みますから、重いストーリーですがどんどん読み進めてしまうでしょう。
そして英語がとても読みやすい。難しい単語はあまり出てきません。分類的には一般書とYAの中間のように思います。

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