夫婦2人家族、引っ越し妻。いいかげん日本に戻りたい主婦の日記〜散歩/本/コーヒー(おやつ)他。

207冊目 Ladder of Years:別の人生

読書ですが、前二冊があまりにも暗いので、寝る前の時間帯だけはこちらを読んでいました。アン・タイラーのずっと読もうと思っていた本です。

ladderofyears.jpg

Title: Ladder of Years
Author: Anne Tyler
Publisher: Knopf
Publication date: 1995
Pages: 325 pages

But if you never do anything you can’t undo — she set a hand on the splintery railing – you’d end up doing nothing at all, she thought.


積み重ねて来た愛しいはずの歳月に、疑いを持つ時ってあると思います。これでよかったのか。もっと別の道があったのではないか。子供の手も離れ、医師の夫も仕事でそれなりに評価を得て、何不自由なく幸せな主婦であるDeliaは、最近モヤモヤすることだらけ。最近亡くなった仲の良かった父親の死も、大きなダメージであった。

もう大きい子供達は、Deliaを口うるさいだけの家事をする人くらいにしか思っていないし、そこそこ上手くいっていると思っていた夫は、どうやらDeliaの父親の病院を継ぐことが狙いだったらしい。

誰からも必要とされない空しさ。そして夫の自分への愛もあやしくなった。子供の頃から同じ家に住み、父親から夫へと家長が変わり、自分の存在に疑問を持ち始めたDeliaは、ある日家族でビーチに遊びに行き、そのまま姿をくらませてしまう。と言ってもアンタイラーですので、重苦しい感じではなく、「あららら」的なね。

見知らぬ町に降り、あまり考えずに週貸しの下宿宿を借りる。医者の家で育ち事務仕事を手伝って来たDeliaは、タイプやら電話の応答が出来るので、町にある唯一の小さい弁護士事務所の事務兼雑用係りの仕事も得るの。

Deliaの突然の蒸発に、家族は驚き、新聞沙汰にもなるわけだけど、Deliaが無事であることを知ると、それっきり音沙汰がなくなるわけです。夫も子供も迎えにも来ず、「まあ一人になって考えたいこともあるんだろうね、邪魔しないよ」みたいな。一方で新しい町では友人、仕事、仲間とどんどん関係が広がっていく。一人では何も出来ないように思われ、自分もそう思っていたDeliaだけれども、どうやらそうでもないらしい。

「自分探し」みたいなものとは違うのね。Deliaは自分が何がしたいのかすらよくわからず、気持ちのモヤモヤや、腹立たしさをどうにかしたいだけなの。普通はここで趣味でもスポーツでも何か没頭出来るものを探したり、忙しくして考えないようにしたり、離婚を考えたりすると思うんだけど、それもまた誤摩化しであることには変わらない。Deliaの行動は直球すぎるけれど、正直ではあるわけです。

一人になって、自分と向き合いつつも、自己分析するわけではなく、家族や友人に説明するでもなく、淡々と間借りした一間で寝起きし、本を読み、ぼーっとし、仕事に行き、馴染みの店で食事をし、図書館で本を借り、また部屋に戻り本を読み、ぼーっとし、、を繰り返すだけ。

いくつかの可能世界は誰にでもあります。結婚した私、結婚しなかった私、子供を三人産んだ私、一人だけ産んだ私、子供のいない私、一人で生きる私、親の面倒を見る私、海外で暮らす私、実家から出なかった私、仕事を続けている私、辞めた私、主婦の私、この夫、あの人と、と。Deliaはまったく別の人生へと、躊躇なくタイムトリップしちゃうわけです。本には人生をやりなおそうとするおじいさんが登場しますが、Deliaの行動はもっと軽やかでで、それでいて自分が納得するまで諦めない頑さがあるのね。ところでそのおじいさんの台詞で、老いた自分の前妻の顔についての台詞がとても気に入った。

I used to sit by her bed and I thought, This is her true face. It was all hollowed and sharpened. In her youth she’d been very pretty, but now I saw that her younger face had been just a kind of rough draft. Old age was the completed form, the final, finished version she’d been aiming at from the start. The real thing at last! I thought, and I can’t tell you how that notion colored things for me from then on. Attractive young people I saw on the street looked so,,,temporary. I asked myself why they bothered dolling up. Didn’t they realize where they were headed? But nobody ever does, it seems.


若い頃の顔は、どんなに美しくても下書きのデッサンに過ぎず、老いた顔がその完成形だという考えは深いではありませんか。

起承転結大きな山場がある小説ではなく、そんなに面白いわけでもなかったのですが、「Deliaは一体どうするんだ?」的な興味が離れず読み進めてしまう本でした。面白いのは、誰よりもDelia本人が一番「Deliaはどうするんだ?」と思っているところなんですけどね。

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*国内外問わず、夫の仕事の関係で引越しばかりしている40代の主婦(子供なし)です。最近は海外ばかりでいい加減日本に帰りたいです。
*すぐ引っ越すので知り合いが出来にくい/単独行動/インドア派、と引きこもり要素たっぷりではありすが、前向きに楽しみを見つけながら暮らしていければと思っています。
*読書や映画の感想を時々書いてます。

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